ちーくん

海の沈黙のちーくんのレビュー・感想・評価

海の沈黙(1947年製作の映画)
4.3
ジャンピエールメルヴィル作品。メルヴィルの長編デビュー作は細かくて繊細な人物描写を表した傑作でした。メルヴィルの作品といえば、一切無駄がないストーリーと説明、そして「メルヴィルブルー」と呼ばれるフィルムで映したオシャレでスタイリッシュな犯罪映画が主で、しかもそれらの作品はどれも美しくて芸術的で自分もそれが大好きなんですが、本作はドイツ占領下にあるフランスを舞台とした現実的で、ある意味泥臭いとも言える戦争ドラマなんですが、長編デビュー作にしてそれさえも見事に撮ってしまう手腕は流石だなと思います。本作の見処とも言える、フランスに想いを抱いて一方的な会話をする将校にまるで抵抗を示すかのような沈黙を貫く老人と姪の心理描写も良かったんですが、自分はそれらのやり取りの中でクローズアップで写される顔の表情、目線、手などの細かい人物描写に感銘を受けました。やはりストーリーがメインということで、映像に関してはそこまでかなと思いきや、美しさとは違う意味のこういう細くて繊細な映像で魅せてくれるメルヴィルはやっぱり凄いなと思いました。観る度にフランス史上最高の映像作家の一人だなと感じさせてくれる素晴らしい一本でした。
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