とうじ

海の沈黙のとうじのレビュー・感想・評価

海の沈黙(1947年製作の映画)
4.5
メルヴィルはディテールを見せるのが非常に上手いし、だからこそ彼の数々のギャング映画はハリウッドのテンプレをなぞってるだけなのに、全く新鮮でみんながびっくりしたのだが、本作のようなミニマルな室内劇でももちろんその才覚はさえ渡る。
ナチス占領下フランスのある農民の家に、ナチスの将校が強制的に長らく泊まることになるという話。将校は礼儀正しく、毎日農民に話しかけるが、農民は彼のことを無視し続ける。日が経つごとに、その部屋に静電気が充満していくような緊張感がすごい。
しかし、メルヴィルの他の作品のようなドライさよりは、ディテールを積み重ねていくことで、ヒューマニズム的な観点を生み出している。
今までで見た映画の中で一番美しい「顔のクロースアップ」がある。映画の、イメージだけで鳥肌を立たせることができるという利点が、本作の物語を語る上でめちゃくちゃ機能している。
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