けーはち

ラストエンペラーのけーはちのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
3.5
歴史教師が本作を「甘粕は隻腕ではない。何となく凄味を出すために適当な脚色をした」と批判したのを思い出す。史実との相違部分は本件に限らずWikipediaに記載通り枚挙に暇がないが、そこは映画なので論っても詮無き話。知的なジョン・ローンの風貌、異国情緒溢れる荘厳な舞台と壮麗な美術、多数の有名無名の人物と共に奏でる歴史の諸行無常、坂本龍一の音楽の寄与もあってそれらが織り成す画面に揺蕩う雰囲気に飲まれ、オスカー総ナメの高評価も首肯したくなるが、考えてみれば、溥儀は紫禁城でテニスしつつノホホンと滅亡を受け入れ、かと思えば宦官の追放など微力でも改革を試み、満州国皇帝としては関東軍に拉致されたのか、それとも返り咲く野心があったのか、戦後は絶望で自殺を図るほど自省したのか、相変わらず監獄でも親戚を召使にする貴族意識のボンボンなのか、キャラとしては全く安定せず、な~んもワカラン。時代に翻弄される人間とはかくも多面性がコロコロ出るものだと、あえてフワッとした雰囲気映画にしたのだろうか。