数百年続いた清朝が簡単に滅亡し、皇帝の血筋も途絶えてしまったことを考えると、天皇家の万世一系の家系が現在も存続していることに驚きを覚える。
清朝末期と時を同じにした明治天皇は、幕末の動乱や明治維新、日清日露戦争を乗り越え、昭和天皇は226事件や日中戦争、太平洋戦争の敗戦と占領など幾多の苦難を乗り越えて現代まで存続している。
この時代に一つの皇帝が存続する事は奇跡に近いのではないかと思った。
映画の内容だが、3歳から皇帝として即位した愛新覚羅溥儀。身の回りの世話は宦官や女官にさせており、全く生活には困らない贅沢の限りを尽くした暮らしぶりだった。
ところが当の本人は紫禁城から出たことがなく、外の世界を見たいと夢見ている。生みの親が死去した際ですら紫禁城の外に出る事は許されなかった。結婚相手も決められた王族とのお見合い結婚。皇帝という立場でありながら本人の意思で決められる事はほとんどなかった。
人間の幸せというものは物質的な豊さに限ったことではなく、己の意思で物事を決められる自由と物質的なバランスがあってこそ得られるものなのかもしれない。
そして溥儀は改革をしたいと望むも、旧態依然とした部下たちによって妨害されたりする。皇帝は毒殺されることがよくあるようで、革命を起こそうとすると妨害に遭い暗殺されたりするようだ。
ここでまた明治天皇は、反対勢力に暗殺されずに済んだなぁと思ったりもした。
最後の溥儀が幼い頃、遊んだコオロギとなってこの世から姿を消した場面がとても印象的で、元皇帝といえども最後は呆気ないもんだなと思った。
そんなこんなで、最後の清皇帝そして満州国皇帝の最初で最後の皇帝である溥儀、ラストエンペラーの半生が描かれている。
昨年亡くなった坂本龍一さん作曲も挿入されていますしご本人も出演しています。
大作映画でアカデミー賞受賞作ということで当時の清朝の衣装や小道具にも力が入っていたと感じた。総合的に見て素晴らしい映画だと思ったのですが、欧米向けに制作したからしょうがないとは思うが、中国人なのに全員英語を話しているのが違和感しかなかった。