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ラストエンペラーのAKのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.2
ベルナルド・ベルトルッチ『ラスト・エンペラー』を観た。ちょっとずつちょっとずつ、観賞が半年にわたったのは、良く言えば内容の重厚さと語られる歴史の濃密さで、悪く言えば、やはり言語の問題である。なんでイタリア人監督の中国合作で登場人物全員英語喋るんだよ。中国語より日本語のが多いじゃん...

鑑賞後もろもろ調べているのだが、中国共産党が撮影全面協力しているのは面白いな、ラスト30分なんて完全にマオ批判じゃん。1987年ていう公開年を鑑みるに、もうかなり「雪解け」の雰囲気があったのか? 先々月学会で赴いた長沙はまだマオ崇拝が凄かったけれど、それは今のナショナリズムを反映しており、それは一周回ったものなのだろうか?

劇中、満州国の皇帝に据え置かれた溥儀が昭和天皇ヒロヒトの名を出し(なぜ日本大使館に逃げ込んだ?と問われ、「我々は年齢が近いから」というのは凄くいいシーン)、実際に東京に赴くのだが、wikiによると東京で天皇と会うシーンはお蔵入りになったらしい。菊タブーはインターナショナルなのか、どのような政治が裏で働いたのか知りたい。

ベルナルド・ベルトルッチ作品は数年前に早稲田松竹で『革命前夜』を観ただけだが、そのあまりにねじれたコミュニズムへの距離が大変興味深かった。『ラスト・エンペラー』も、ベルトルッチのそのねじれの系譜なのかもしれないなぁ

以下はもろもろ私的メモ

・観た理由の一つはジョアン・チェンが皇后婉容を演じていたからで、ネタで「ツイン・ピークスじゃんw」などとツイートしていたが、ラストの虫シーンで驚愕。俺のような後追いは、あのシーンで『ツイン・ピークス The Return』第8話がフラッシュバックすること間違いなし。

・デヴィッド・リンチのMasterClassで、彼は「どんな些細なことでも絶対にメモを取れ」と力説していたが、リンチはあのシーンをメモしていたのでは? と邪推してしまう。ピーカー(死語)は絶対『ラスト・エンペラー』を観て欲しい!

・なぜこのタイミングで観たかと言うと、先日読んだ村上龍『オールド・テロリスト』で、語り手セキグチが批判的に言及するんですよね。たしか「何も面白くなかった」的に。それがあまり脈絡のない言及のされ方だったから引っかかった。ただ友人である坂本龍一に触れたかっただけでは...?
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