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ウルフ・オブ・ウォールストリートのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 今作のディカプリオは支えず、しがみつく(「タイタニック」爆笑オマージュ!)。

 本当に、スコセッシは食わせ者だなと。いつも判断できない。早い話「で、肯定否定どっちなの?」となる。表層の生き生きぶりはイメージとしてグルーヴィー過ぎて観てる時はアドレナリンバンバン出るし爆笑だけど、敬虔な心を持つもう一人の自分が「ありえない…」と絶句する。いや脳は正直に「たのしー」って言ってますけど。ほんで片目ずつ意見がまるで別れたままに鑑賞してるとラストにポケーッとした人らの顔とご対面。ディカプリオ演じる”ウルフ”ことベルフォードの講演会をありがたがって聞いている、臆病で、無防備な顔。これがあんたらだと見せつけて映画は終わるが、その顔もまた「詐欺師の話に耳を傾けるなよ」と言いたいのか、「ウルフ視点になって彼ら側に決して陥るな」なのか、「ここから新たな芽がでる、そしてあんたらの中からも」なのか、一概に言えない。しかし、映画に幾つもの意見が生まれるように、あの演説に感銘を受けてムクムクと育つ芽があることは、止められることではないのかもしれない(浮気の言い訳は全然できないところに彼の真実が、演説以上に一番出てる皮肉よ)。この映画がまさしくアッパーで止めどない刺激で横溢していたように、そしてそれを楽しんだ観客は共犯、この輪からは逃れられない!

 “ワル”の伝染、継承。後半では一切出ないのに、確実にベルフォードの人生に爪痕を残したであろうマシュー・マコノヒー演じるマーク。こいつの仕草や考えは、後のシーンにベルフォードによって反復される。この継承というのは、スコセッシのサブテーマとしていくつかのフィルモグラフィーに通底しているように思える。新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」にもそんな臭いがする。この継承というテーマは、アメリカの巨匠、スピルバーグやコッポラにも見受けられる、しかし方向性は違う。スピルバーグはスコセッシと対照的で、より教育的な継承を、血縁を越えて行うことを推奨しているように感じる。コッポラはちょっとまだよくわかってないです。スコセッシは悪い父像(ダーティー・グランパ笑)が血縁を越えて継がれる、というか伝染することを描く。

 実話ベースだから実名のものも多いのだが、ベニハナという料理店、実在しており実際のcmも使用され、創業者のロッキー青木という人物がインサイダー取引で逮捕されている。驚きなのは彼の子供らが有名DJスティーヴ・青木と女優のデヴォン・青木…って、業界に幅を利かせる青木一族で別の映画撮れるだろ。
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