MasaichiYaguchi

サンブンノイチのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

サンブンノイチ(2013年製作の映画)
3.3
この作品の主人公たちは人生崖っぷちで、切羽詰まっている。
木下半太さんの小説を原作とした本作は、「人生一発逆転」の台詞といい、内容といい、登場人物たちといい、「カイジ」にオーバーラップする。
ギャンブルに夢中になって、キャバクラ店の売上金400万円を紛失した雇われ店長・清原修造、通称「シュウ」役の藤原竜也さんが、もろに「伊藤開司」に被る。
そして彼が失くした大金を補填する為に借金した渋柿多見子が、帝愛グループの兵藤を彷彿させる。
「川崎の魔女」と呼ばれる裏社会の顔役から大金を借りた主人公は短期間で返済せねばならず、仲間をスカウトして銀行強盗を敢行する。
この彼の仲間になった連中も、何処か「カイジ2~人生奪還ゲーム~」のメンバーをイメージさせる。
この作品は銀行強盗そのものより、強奪成功後の方に重点が置かれている。
奪った大金を巡り、銀行強盗メンバー、それを裏で画策した者たちが入り乱れて争奪戦を繰り広げる。
「裏の裏、その裏のまた裏」
ストーリーは我々を欺くようにトリッキーに展開するのだが、その舞台裏を時間を前後させたり、様々な映像表現でユーモアを交えて描く。
出演者の中では、主人公に誘われ仲間となった金森健役の「ブラックマヨネーズ」の小杉竜一さんがなかなか良い味を出していたのと、同じく強盗の片棒を担ぐシュウが働く「ハニーバニー」のキャバクラ嬢・茉莉亜役の中島美嘉さんが従来のイメージを払拭して演じ、そして店のオーナーで外見も性格も凶悪な破魔翔をブチ切れた演技で表現している窪塚洋介さんが印象的だ!
色々な映画の蘊蓄に関する台詞を劇中に鏤めているくらいだから、脚本・監督の品川ヒロシさんは、主演の藤原竜也さんの「カイジ」シリーズを充分知っている筈だ。
だが、私には単なるその「類似品」のようにしか見えなかった。