うえびん

her/世界でひとつの彼女のうえびんのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.3
無分別の世界

2013年 アメリカ作品

妻と別居し、離婚調停中のセオドア(ホアキン・フェニックス)は、自分を責めて絶望の中にいた。そんな彼が、人工知能のサマンサ(声のみ:スカーレット・ヨハンソン)に出会い、戸惑いながらも彼女に恋をする。そんな近未来を描いたラブストーリー。

ポップで軽い作風。オレンジを基調にした映像が美しい。物語もライトでサラッと見れて、作品世界には浸りきらない。バーチャルな世界観を描いているから、2.5次元の世界を眺めているといった感じ。眺めていただけだから、感じ入ることも少なく余韻も薄い。

ChatGPTが進化したりして、本作で描かれるような疑似?恋愛が現実のものになるんだろうか。そもそも人間の心は身体と不可分なもの。心に影響を与えるのは五感を通じて感じ取ったもの。セオドアは心のスキマを人工知能のサマンサとのバーチャルな恋愛で埋めようとしたけれど、聴覚を通じた声と言葉だけで、どれだけ心が揺さぶられたんだろうか。

現実の結婚や離婚では、セオドアも友人のエイミーも、自分を責めるか相手を責めるか、極端にどちらかのモードに入るのが面白かった。脳(思考)は世界を分別する。五感は世界をそのまま感受する。はたしてこの先、恋愛や結婚の無分別の世界を人工知能が再現できるのだろうか。
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