あーや

her/世界でひとつの彼女のあーやのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.8
人間とAIの間に生まれた恋愛関係を描いた物語で、アニメなどによくある軽率なラブストーリーではなく、既存の人間関係の中にAIをn+1の存在として位置付けたらどうなるか?ということについて、思考実験的にかなり真摯に向き合っている。

主人公はそれなりに充実した生活を送っており、恋愛についても美女を取っ替え引っ替えするような状態にあるため、本作におけるAIは決して冴えない男の慰み者として描かれているわけではないというのは非常に重要な論点だろう。

ラストシーンは、AIの自己進化によるシンギュラリティの発生を示唆しているのだろうが、かなり分かりにくい描写だった。
もし企業のバックグラウンドがあるとすれば、自由自在にAIが進化してユーザを置き去りにするというようなことは考え難い話で、こういう形でのオチにするのであれば、分散型の環境において属人性の薄い状況下で動作している、ぐらいの設定をきちんと入れ込んだほうがリアルなのではないかと。

とはいえ、2013年のAIストーリーとしては相当上手くやったほうだと思う。
主演ホアキン・フェニックスの一人芝居も完璧。

世界的に極めて高い評価を得ていることに加えて、生成AIの台頭という文脈でこの映画がよく言及されていたため参考までに視聴したのだけど、大変意味深なストーリーで何かと考えされられる点が多く、その価値は大いにあったかと思う。
"2001年宇宙の旅"などと同様に、今後も現実世界におけるAI技術の進展に伴い、折に触れて参照されるであろう作品。

なお、例によって日本からの評価だけが妙に悪く、世界的な評価と日本国内評価とが大きく乖離している映画の一つ。
やはりテクノロジー系の話題は基本的に日本人に理解されにくいらしい。
あーや

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