喜連川風連

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語の喜連川風連のレビュー・感想・評価

4.7
アニメ史に残る傑作。
正直、絵柄と声優と魔法少女が苦手で避けていたが、大後悔。
売れ線の萌え商業アニメにテリーギリアムや今敏などの実験アート表現をぶち込んだ快作。

救世主となり、全ての魔法少女の原罪を背負い、キリスト教でいう「神」になったマドカ。

輪廻(つながり)がたまればそれはケガレになり、ケガレを浄化すれば、またどこかでケガレがたまるという無間地獄。
それを断ち切るために、概念上の存在(神)になったマドカに、悪魔(己の欲望のために動く存在、ホムラ)の手が忍び寄る。

ファンが見たかったもの(魔法少女の共闘や変身シーン)を提示しつつ、新たな境地へと達する見事な脚本。

全時間にわたり、延々繰り返されるコラージュを多用したサイケな演出・作画それを可能にする例の設定。

二次元と三次元が乱れる様は、セザンヌ・ピカソを見ているようだ。

内面世界が絵に表現される。

外世界とつながる際は印象的に「窓(マド)」が使われる。

そう。

この物語は外世界との対話の物語。
「窓かマギカ(魔法)」だったのだ。

そして自己中心的な欲望・執念がホムラを異形の存在へと導く。
ホムラは自分に都合の良い内面世界へと閉じこもっていく。
これはまるで昨今の「メンヘラ」や「子ども部屋おじさん」を見ているようだ。

登場人物の問いかけ「自分が気持ちいい世界に閉じこもればいいじゃん」
はまんまホムラ自身の自問自答である。

アニメ版12話ラスト、ホムラだけが取り残されたような絶望を漂わせるように、黒い羽が生えるシーンがあるが、それを見事に回収した形。

最終的にマドカの成熟をなんとしても阻止し、己の願望を成就させる。
このエゴ!愛!ファンタスティック!!
愛は一方的だ!

希望よりも熱く、絶望よりも深い。
「愛」

劇中のキュウベエはひろゆきやホリエモンのような功利主義者たちの暗示である。
それを打ち破る一方的な「愛」

「愛」に合理性は敵わない。
喜連川風連

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