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もらとりあむタマ子のkamomeのネタバレレビュー・内容・結末

もらとりあむタマ子(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

例えばクラシック音楽を楽しむ時に、音楽を学んでいて技術や構造的な知識があれば、それを知らない人よりも楽しめる、ということが起こると思う。
それと同じように、もらとりあむを経験してるか、がこの映画を楽しめるかどうかの線引きになるだろう。
かく言う現在進行形でもらとりあむを生きている私にはドはまりだった。
脚本がお馴染み向井康介であり、久々のオリジナルである今作でも山下敦弘臭は健在。
おっきなスクリーンで見れるうちにあと何度か嗅ぎに行こうと思う。

!これより下はネタバレあり!

二回目鑑賞後
当然一度目よりも感動は薄れたものの、あの世界の住人たちの魅力が損なわれることはない。
全く同じものを見ることが出来る映画の特性を今ありがたく味わっている。

興味深かったのは、観客の笑うポイントが前回と若干異なっていたこと。一度目は初日に、二度目はサービスデイ、どちらも満席という条件は同じであるが、初日はあっちゃんの振る舞いで笑い声が上がることが多かった。拙い推測だが外見であっちゃんファンだとわかる人が多数いたことをあげておきたい。

甲府スポーツの一日は親父さんが看板を出し、札を営業中に置き換えることからはじまる。二度も似たような構図で描かれるこのシーンは、「日常」という二文字を思い浮かばせる。「代わり映えのない日常」がまたはじまることは、タマ子が正に逃れようとしていることであり、食って寝て漫画を読んで飯を食う、ことで必死に逃れようともがくあっちゃんは、とてもみっともないけれど、決して爽快に笑い飛ばすことはできず、己の恥部を見せつけられているかのような痛痒さを伴う笑いをもたらしてくれる。
家を出ろとの宣告をされ、それを受け入れた彼女は、ある時あの甲府スポーツの看板を出し、立て札を切り換えるのである。必死に避けていたことに一歩踏み込んだ彼女の姿は、フィクションであり、作り話であり、予算を出す企業があることで成り立つ映画という仕組みの中で、出演料をもらって演技をしている一女優であるにもかかわらず、そんなあまり考えたくもない側面をポンと飛び越え訴えかけてくる、って本当はただ都合のいいように解釈しているだけなんだけど。

最後に、中盤丸刈りの高校球児風情が甲府スポーツを訪れた1秒あるかないかくらいのシーンがあるが、三人の内の一人が桐島のキャプテンだった気がしてならないのは私だけでしょうか。
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