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マイク・ミルズのうつの話のSのレビュー・感想・評価

マイク・ミルズのうつの話(2007年製作の映画)
3.5
マイク・ミルズ監督が、「うつ」の実体にせまったドキュメンタリー。

今や日本人の15人に1人がかかっているともいわれる「うつ病」。しかし、2000年までは「うつ」という言葉は精神科周辺以外ではめったに聞かれなかった。なぜ、この短期間で「うつ」は爆発的に広まったのか。90年代のユース・カルチャーを代表する映像作家マイク・ミルズは、その理由のひとつに製薬会社によって行われた「心の風邪をひいていませんか?」という 広告キャンペーンがあると考え、その実態に迫るドキュメンタリーを作ろうと思い立つ。
舞台は近年、急速にうつが常識化した東京。ミルズ監督は、うつに苦しんでいる人の中から、撮影を受け入れてくれる数人を公募で選び、インタビューを交えつつ、彼らの日常を撮影していく。

登場するのは、
▪️嫌いな酢を飲み、自己流のヨガをしながら、医薬品配達のアルバイトに励むミカ。

▪️うつ歴15年の37歳、両親と同居しているタケトシ。絵を描き細かく日記をつけている。 今まで仕事を持った経験はない。病院でのうつの集会には、まじめに参加している。

▪️気分をアゲるためにハイヒールとホットパンツ姿で外出するケン。バイセクシャルであることを家族にカミングアウトしていない。自分の手足を縛ってもらうため、縄師のもとを定期的に訪れている。

▪️眠っているときが一番幸せと語る自殺願望が強いカヨコ。体重を気にしており、ほとんどの時間泣いている か、ペットと過ごしている。Tシャツ工場勤務で働く。

▪️毎日4種類の抗うつ剤を服用し、さらに飲酒と喫煙の量も少なくない。 写真撮影やジャズ鑑賞、サボテン飼育と多趣味なエンジニアのダイスケ。

という20~30代の男女5人。映画は、病と向き合いながらも、どうしたら自分らしく生き、暮らせるのかを探す彼らの姿を、優しく、明るい視線で見つめ静かな共感を呼ぶ。
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