アキラナウェイ

フィービー・イン・ワンダーランドのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.8
我が麗しの妖精ランキングに於いて、永久欠番(つまり永遠にNo.1)のエル・ファニングことエルたんの、超絶素晴らしい作品だとフィルマで教えて頂いて、ネットの海の中"レンタル落ち"中古DVDを送料込み569円でサルベージ。

りょーこさん、おススメありがとうございます。

そしたら!!
もう!!
確かにこれは隠れた名作ではないか!!

妖精がまだ幼生だった頃。
「不思議の国のアリス」が大好きな少女が、現実に生きづらさを感じながら成長していく物語。

フィービー(エル・ファニング)は、作家である母の影響でアリスの世界観が大好き。しかし、9歳になってからトゥレット障害の兆候が現れ学校で問題行動ばかり起こしてしまう。校内の演劇会で「不思議の国のアリス」のアリス役に抜擢され、次第に彼女は現実と空想の区別がつかなくなっていく—— 。

トゥレット障害(英: Tourette syndrome)とは…チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるもの。

他人には無意味に思えるルールを自分で課して、それを果たさないと気が済まなかったり、傷だらけになる程に手を洗う潔癖症だったりと強迫性障害の兆候も。

エルたんの卓越した演技力に依るものだが、何せフィービーが居た堪れなくて。

抱えきれなくなった不安が堰を切ったように溢れ出し、母の前で泣いてしまうシーンには思わず涙が…。

自分でもどうしてかなんてわからない。
自分で自分が止められない。
自分がどんどん壊れていく。

「希望はないの?」と尋ねる少女。決まり事の少ない空想の中のおとぎの国なら、希望があるのに。

フィービーが傷ついていくと同時に、母も自分の所為ではないかと自問し苦しむ。演じるはフェリシティ・ハフマン。因みに、フィービーの父親役は、我らが大統領ビル・プルマン。

クラスメイトの奇異な視線に晒され、時に彼らに唾を吐いたりと問題行動ばかり起こしても、劇の中に於けるフィービーは全く問題ナシ。彼女に演者としての才を見出すドジャー先生の、厳しくも同時に優しさを備えた眼差しが印象的。演じるはパトリシア・クラークソン。

現実世界の大人達が、赤の女王やハートの女王、ハンプティ・ダンプティ等「不思議の国のアリス」のキャラクターに扮して、フィービーの空想の中に現れる演出も楽しい。

フィービーへの罰として、劇に出る事を一時禁止するという判断を下した校長は本当にどうかしている。そんなの生きる望みを絶たれるようなもの。妖精の羽根を毟(むし)り取るようなもの。

嗚呼、辛い。

しかしだからこそ、終盤を飾る劇本番の子供達の演舞と、バチクソに歌が上手いエルたんに心のオーディエンスは歓喜の嵐に包まれ、物語は見事昇華される。

エルたん好きには堪らない珠玉の逸品。