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パパロッティのmaverickのレビュー・感想・評価

パパロッティ(2012年製作の映画)
4.5
2012年の韓国映画。『シュリ』のハン・ソッキュと、『建築学概論』のイ・ジェフンの共演作。実際の話を基にした感動作。


パッケージから、師弟愛による感動系の音楽映画だというのは想像出来た。評価も高いのであらすじもよく見ずに鑑賞したが、意外性もあってとても楽しめた。ドタバタコメディからの感動物語な展開。ヤクザの道に進んだ高校生と音楽教師との師弟愛の話で、不良の更生物語にもなっている。コメディに比重を置いた作りは日本の連続ドラマ的ではあるが、演出に関しては非常にレベルが高い。音楽で魅了する表現力と、師弟愛を強く感じさせる人間ドラマに見入ってしまう。ヤクザの世界を悲哀と共に描いた部分にも深みがあった。ハン・ソッキュが出ているだけでも作品に品格が生まれており、共演のイ・ジェフンを始めとした役者陣の演技力の高さがさらにそれを底上げしている。コメディ寄りな人間ドラマとしてはトップクラスの出来であろう。

ハン・ソッキュの貫禄は流石だ。落ちぶれた教師として笑わせつつ、過去に天才音楽家であったことを匂わせる風格というものを感じさせる。鋭い眼光や、ピアノを弾く力強い動きなどにそれが強く表れていた。天性の歌声を持つ高校生のジャンホを演じたイ・ジェフン。昼は高校生、夜はナイトクラブに出入りするヤクザで、間抜けで笑わせる部分と裏の人間としての怖さを感じさせる二面性を巧みに表現している。そして圧巻の歌声の表現力は鳥肌もの。ハン・ソッキュの演奏もイ・ジェフンの歌声も、どちらも当人ではない。だがそれに違和感を全く感じさせない演技力が素晴らしい。二人の渾身の演技が胸を打ち涙を誘う。

ジャンホの兄貴分であるヤクザのチャンスを演じるのは『毒戦 BELIEVER』のチョ・ジヌン。彼の演技にも魅了される。『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ソラは、ジャンホにまとわりつく女子高生役を演じていて笑いと癒しを提供する。校長を演じるオ・ダルスのコミカルな芝居も印象的。個性的なキャラクターが多数登場する愛らしい作品である。


脚色は加えられているが、基本部分は事実と同じというのだから驚く。才能を持ちながらも環境のせいでヤクザの道に入った高校生。そこから恩師である音楽教師に救われて自分の音楽の才能を開花させる。「あなたにあえて、本当によかった」胸を打つ話だ。感動的な物語をさらに美しく脚色した作りが素晴らしい。良作であった。
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