サマセット7

インターステラーのサマセット7のレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.2
監督・共同脚本は、「ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン。
主演は「評決のとき」「ダラス・バイヤーズ・クラブ」のマシュー・マコノヒー。

[あらすじ]
砂嵐の頻発により荒廃し、人類絶滅間近の近未来のアメリカ。
元テストパイロットのクーパー(マコノヒー)と10歳の娘マーフ(マッケンジー・フォイ)は、自宅のマーフの部屋の奇妙な符号に導かれ、NASAの秘密基地にたどり着く。
そこでクーパーは、土星近郊に出現したワームホールを利用した別の銀河への人類移住用惑星探査任務について聞かされる。
人類の救済、ひいては子供たちの未来のため、クーパーは別銀河に向けて帰還の当てのない旅に出ることを決意するが…。

[情報]
独自の作家性、本格的な作品構築、大衆に受け入れられる娯楽性を併せ持つ、現在随一のヒットメイカー、クリストファー・ノーラン監督による2014年公開のSF映画。

1997年の映画「コンタクト」のプロデューサーであるリンダ・オプストと、理論物理学者であり後にノーベル物理学賞を受賞するキップ・ソーンの2人が作り上げたストーリーのアイデアから企画がスタートした。
当初監督にスティーブン・スピルバーグ、脚本にジョナサン・ノーランが予定されていたが、後にスピルバーグが降板、ジョナサンの兄であるクリストファー・ノーランが後釜に座った、という経緯で現在のスタッフ編成となった。
キップ・ソーンはエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされており、今作に登場する相対性理論、ブラックホールにおける時間への影響、ワームホールなどについて理論物理学の見地から助言を行っている。なお、キップ・ソーンは、2020年公開作「TENET」でもクリストファー・ノーランをサポートしている。

なるほど!ガチガチに理論武装された、ハードSFか!!と嬉しくなりそうだが、そこは科学的厳密さよりもエンタメ性と自己のこだわりを優先させるクリストファー・ノーランの作品。
現代の科学では解析不能な部分については、大胆に超現実的な飛躍を見せる。
また、厳密に考えるとおかしな点も多数あるようだ。
TENET同様、細かい部分は気にせず楽しむのが吉であろう。

今作でのクリストファー・ノーラン独自のこだわりとしては、以下の点があげられる。
・CGIに極力頼らない、実物志向。アイスランドでの「氷の惑星」のロケ撮影。撮影用のトウモロコシ畑の栽培など…クレイジー!!
・フィルムとIMAXカメラへの偏執的こだわり。
・偏愛するモチーフ、「時間のねじれ」に焦点を当てた脚本。相対性理論にブラックホールと来れば、好きなだけやっちゃうよー!!
・古今の名作娯楽映画のオマージュ。今、2001年宇宙の旅を作るなら、コレだー!!!

今作は一般観客を中心に広く支持を集めており、一部ファンからは熱狂的に評価されている作品である。
クリストファー・ノーランの代表作との呼び声も高い。
1億6500万ドルの多額の予算で製作され、7億ドル超の大ヒットとなった。
アカデミー賞視覚効果賞受賞。

[見どころ]
クリストファー・ノーランのこだわりを撮影監督ヴァン・ホイテマ(007スペクター、TENET)が形にした、「本物の宇宙」の映像の数々!!
ワームホール、ブラックホールなどをネタに、次から次と押し寄せる怒涛の展開に3時間近く引き摺り回されるストーリー!!
直方体の2体のロボットや回転する宇宙船をはじめとする、SFギミックの面白さ!
一貫する父と娘の物語!!
アン・ハサウェイ!マイケル・ケイン!ジェシカ・チャステイン!!途中で出てくるあのお方!
そして何より、マシュー・マコノヒー!!
最高ーー!!!!!

[感想]
久々に再鑑賞。
初回の感想「ノーランっぽい。SFとは(苦笑)」。
今回の感想「マシュー・マコノヒー!!!(ウルウル)」。

どうしても派手なSF設定や未知の宇宙の描写に目を奪われる作品だ。
またノーラン作品とあって、一定の予見も働く(偏見ともいう)。
その意味で、前回の鑑賞時は、やや色眼鏡がかかったか。
楽しんだは楽しんだが、終盤の飛躍に乗り切れなかった。
映像は凄いが、全体としてはそこそこの作品、という印象だった。

今回、海外ドラマTRUE DITECTIVEでがっつり8エピソード分マシュー・マコノヒーを観た上で今作を見ると、改めて彼の演技の上手さと魅力に惹き込まれた。
もはや、外側のあれやこれやや、科学的なツッコミどころは、どうでもいい。
自分の人生の鑑賞タイミングの問題もあろうかと思うが、ただただ、クーパーと、マーフの親子愛の物語に集中できた。
別の銀河に、娘を捨て置いて旅に出るなんて、辛すぎる…。
さらにあんなことやこんなことが起こるなんて…。

思うに、クリストファー・ノーランの作品の中では、最も人間ドラマが描けている作品ではないか。
これは、クリストファー・ノーラン自身に娘がいることとも関係があるかもしれない。
彼は、脚本参加段階で、子供の性別を娘に直したそうだが…。

というわけで、2度目の鑑賞で評価は上方修正。
なるほど、既に観た作品を、時を経て見直すのも面白い、と再確認した次第である。

[テーマ考]
クリストファー・ノーラン自身が家族の映画、と述べているように、今作は、父と娘の絆を描いた物語である。
クーパーとマーフ、アメリアとブランド博士のそれぞれの父子の関係性は象徴的だ。
今作の、父子の間の隔たった時空についてのSF的なあれやこれやは、全て、このテーマを描くための舞台装置と言えなくもない。
地球の出来事と宇宙の出来事が、同時並行的に語られる表現方法を用いていることも、その証左であろうか。

個人的に、クリストファー・ノーランは、アイデアや題材ありきで映画を作ってしまう監督、というイメージがあり、TENETなどはその極地だと思う。
しかし、今作では、語るべきテーマと、題材となっているSF設定のバランスが、他作と比べて良い気がする。
これは、もともと他人の持ってきたアイデアに、ノーランが後から参加した、という製作経緯も関係しているのかもしれない。

今作から受けた教訓は、娘が必要としている時に、必要としている場所にいてやりなさい、ということだ。
何しろ人生は短いのだから。

[まとめ]
人気監督が宇宙の描写に挑み、父子のドラマに昇華させた、10年代SF映画の傑作。

やはり、マシュー・マコノヒー、いいなあ。
引き続き、他作も観ていきたい。