ヘソの曲り角

インターステラーのヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
2.0
こんなにスケールデカくなくても全然できる話だった。大仰さに全然ついていけずシラけてしまった。人間の愚かさの波状攻撃でさんざん苦境に立たされても諦めずに「生きて地球に帰る(生きて家族に再会する)」話。広大な宇宙を進んでいく"距離"の話のはずが最終的に"時間"の話になってアクロバットな着地をしてみせる(のちの「TENET」でも描かれるタイムトラベルによる救助)。

このテーマに関しては別に悪くはないのだが引っかかることが多すぎた。まず気候変動で地球が死にかけてる世界でNASAが(表向きだとしても)潰れるとは思えない。おまけに学校教育で月面着陸は嘘なんて教えてる世界観はいくらなんでもやりすぎだろう。さらにブラックホールの中で船(ほぼ光速に耐えてるから船がある程度耐えたのはまあ分かる)から出たら身体が重力で引きちぎれるだろう?とか宇宙に行くの決まってから乗るまでのシーンが省略されすぎててちゃんと訓練はしたのか?とか案の定ステーションが回転しただけで酔ってて訓練足りてないよ!!?とか1時間で7年過ぎる星なのに全部判断が遅い!!とか、インセプションの時もだったプロ集団のはずなのに色々お粗末すぎるのが本作はノイズになってた。あとテネットもそうだったけどノリが往年の大味なSFなどに似ていてそれものりきれなかった理由だと思う。てか、前半は『フィールド・オブ・ドリームス』で宇宙行ったら『2001年宇宙の旅』と『スターウォーズ』でプロットはベタなのであまりワクワクしない。知ってるこれ〜、という映画好きの答え合わせ大会みたいで、それでいてこんなに大スケールなのにオリジナルにはなぜか勝てない。

別々の場所でのピンチをクロスカッティングしながら緊張感を高めていくノーランお得意の演出も今回はふたつの局面の危険度が釣り合いが取れてなくて心情的に全然クロスカッティングしないという致命的な問題が中盤起こっていた。

『メメント』や『インセプション』は映画装置自体の効果と物語の時間・夢幻意識が噛み合った映画的体験によって楽しめる非常に高度なアトラクションだったのに、『インターステラー』以降の作品は言語的説明と大画面・大音響による支配的空間構築によって無理やり作品世界に叩き込むような作りになっていてそれは全然よくないと思う。『インターステラー』以降はIMAXで100% 体感できてほかでは正直目減りするのが実情だと思う。どの環境でも100%面白くてIMAXだと120%になる、というような作りになっていない。それが、主にSNSなどで誇張に誇張を重ねて喧伝する「映画体験」厨を多数生み出している温床になっている。クリストファー・ノーランは素晴らしい作家だが「インセプション」を最後に、それ以降素晴らしい作品は撮れていないのが現状だと思う。