爆裂BOX

エスケープ 暗黒の狩人と逃亡者の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.7
ペストで荒れ果てた1363年のノルウェー。馬車で旅をしていた親子が山賊に襲撃され、一人生き残った娘のシグネは女ボスによって山賊のアジトに連れられて行く…というストーリー。
「コールドプレイ」の監督と脚本家コンビが作った人間狩りサバイバルアクションです。
女ボスダグマルは娘のフリッグの妹を産ませる為にシグネを連れてきたのですが、フリッグがシグネと共に逃げ出してしまい、山賊達に追われる事になります。
「コールドプレイ」の時もですが、この監督さんは演出が非常に丁寧なので安心して見ていられます。スローモーションも多用せずここぞという時に使うので効果的です。岩だらけの原野や十字架がぽつぽつと立っている墓、山深い森等ロケーションも見事です。
「コールドプレイ」では恐怖に怯えながらも果敢に殺人鬼と戦う女子大生を演じていたイングリッド・ボルゾ・ベルタルがタフで冷酷な山賊の女ボスを演じてまた違った役柄で魅せてくれます。強い女という共通点はありますが。このダグマルに悲惨で悲しい過去があってそれゆえにビンタしたり厳しく接したりしながらもフリッグを溺愛しているという設定もいいですね。大切な者を無情に奪われたから奪う側に回ったのか。農夫の小屋でNO2の男に手放して自由にしてやろうと説得されても諦められない所はまた娘を失う悲しみと苦しみを味わいたくないという思いが伝わってきました。No2はフリッグを手放して自由にする事が彼女の幸せになるならそれが一番と考える等彼が一番フリッグの事を考えていましたね。ダグマルにクロスボウを向けられて仕方ないというように目をつぶる所が印象的でした。ダグマルの複雑で悲しみ背負ったキャラは見所と言えますね。
最初は怯えて逃げて中々戦えなかったシグネがフリッグを取り戻す為に戦士として強く成長していく所も良かったです。フリッグも幼い少女ながら強さを秘め、シグネを思いやる優しさを持ち合わせているのもいいですね。
途中で出会う農夫もいい味出しています。しかしこのおっさん山賊との立ち回りでの身のこなし等明らかにただ者じゃない(笑)
後半のシグネが農夫から教わった槍での熊殺しの方法や父親から教わった弓矢を使って山賊達と戦う所は戦闘能力高くないだけにハラハラさせられます。ダグマルとの戦いも緊張感ありましたね。初めて「ママ」と呼ばれた喜びから生じた油断がダグマルの命取りになる展開は悲しかったです。
シンプルなストーリーながら丁寧な演出で飽きずに見られる良作です。