kusu

サタンタンゴのkusuのネタバレレビュー・内容・結末

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

2022/03/18 @横浜シネマリン

1回目の鑑賞で資本主義って書いたけど、無秩序の環境で自由を恐れてる状態っていう方が正しい気がした。雨や湿気、蜘蛛の巣をメタファーに(自由を恐れて,社会主義の構造の中で)身動きが取れず、徐々に蝕まれていく感覚が伝わってくる。
ただ後について行く動物の群れと大差ないな

フタキとイリミアーシュと先生がきいた鐘の音が同質なものなのかわからないけど、鐘の音がハンガリーのナショナリズムを表し3人がその過去と地続きの願いを受け取ったとすれば、3人それぞれの異なる態度と意志は歴史のなかで既に繰り返されていたことのように思える

ダンスのシーンで、ほとんどの時間 好き勝手自由に踊り 終盤で形式のあるタンゴを踊りはじめたのが、サタンタンゴのストーリーにある人物の生活と被ってみえた。つまり、イリミアーシュが来る前と来た後の生活。そして、タンゴ自体にも国や人、ストーリーの動きが込められているはずだからあれは大事なシーンになっているのだと思う
その好き勝手踊ってる姿をみた少女が、村の無秩序を感じ取ったのだとすれば、その後の行動もまだ少しは理解できるな

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2022/02/28

2回に分け、夢中で観た
全然わからんかったから何回も観よう

同じ時間を多数の視点で描かれる物語って、過去/現在/未来の現在が強く意識されるし、タル・ベーラ作品の場合 予定調和を感じず淡々とそうなっていく様子を神様ぐらい高い視点でみてる気持ちになれる
極端にデフォルメされた間じゃないから、映っているものが着色なく素直に入ってきやすかった

前半について。我儘に過ごすどころか、全員そうすることが当然の権利かのように動いてる。ましてや自分の主張を理解させようとはしていないのが気持ちいい
大好きな「人の歩くカット」が長尺でいっぱいあって嬉しかった

後半について。横領の企みや売春まで発生するほど資本主義な経済になり 民主主義的な政治様式になっていた前半部分。そこからイリミアーシュが戻って荘園の機能が回復し、社会主義かつ君主制へと変わっていく。極めてフラットに資本主義も社会主義も描かれてるのが凄いな。住民からすれば慣れてきたところに生活の変革をもたされるのが苦痛なんだろうなあ。だからこそ、イリミアーシュが構える荘園へと戻るときの住民の表情に胸打たれるんだと思う

ジム・ジャームッシュやアピチャッポン・ウィーラセタクンに影響を与えたというのも何となくわかるし、ロイ・アンダーソンっぽさもあった

タル・ベーラへの期待なんて無意味やな
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