ストレンジラヴ

サタンタンゴのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
4.0
「誰を応援する?」
「自分だ」

経済がすっかり停滞しきったハンガリーの寒村。点在する村人はすっかり生気をなくし、虚ろに日々を送っている。秋に入り長雨の季節が訪れて太陽が差し込む気配もない。そんな村に、1年半前に死んだと思われていた若者イリミアーシュが帰ってくる。かつての不良ぶりはすっかりなりをひそめ、品行方正な青年へと変貌していたイリミアーシュ。果たして彼は村の救世主か?それとも悪魔か?
上映時間438分、つまり7時間18分。なぁなじかんじゅうはちふぅん!?この時点で既に正気ではない。そして全編通じてカットはわずかに150カット、つまり1カット平均3分弱だ。さんぷんじゃくぅ!?観る者は長回しのボディーブローを7時間以上にわたり浴び続けるのである。ちなみに劇中インターミッションは2回設けられている。
もちろん僕にとっては歴代最長の上映時間で、これまでのタイトルホルダーであった旧ソ連版「戦争と平和」(1965)を14分上回った。さらに「戦争と平和」は4部作だったから、単独作品としてはぶっちぎりの長さであることは言うまでもない。さすがにぶっ通しで観る自信はなかったので、1日のうちに観終わることを条件に小休止を挟みながら最後まで観た。
何か壮大な映像詩篇であることは間違いなく、観終わった後には謎のやりきった感はある。しかし、例えば「風と共に去りぬ」や「ゴッドファーザー」のように明確なストーリー展開があるわけではなく、全編モノクロであることと、晴れの描写が1分たりともないため終始暗い展開が続き体力はゴッソリ削られた。そして開始から4時間半くらいは1日の出来事を複数の村人の視点で繰り返し振り返る「ダンケルク方式」が採られているため、「同じ話を何回すんねん?」という気持ちにもなってしまう。
と、何とも暗い展開ばかりなのだが、慣れてくると何となく最後まで観たくなってしまい、結局最後まで完走させるのは自分もタル・ベーラ監督の術中にハマってしまったということだろう。
だがね、これだけは言わせてほしい。どう考えても猫に罪はないだろうよ。