砂

サタンタンゴの砂のレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
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7時間18分というとてつもない上映時間で伝説と化している本作、東欧版DVDが手に入ったので自宅で鑑賞。私は英語力が残念であり、ことに思弁的な会話などついていけるわけがないので本作においては半分以上の会話がわからなかったため、会話劇については何もコメントできないことをあらかじめ記しておこう。


「ニーチェの馬」に衝撃を受け、ずっと観たかった本作。なにせ長いのでなかなか躊躇したが、休みを費やして鑑賞した。
この上映時間に対してカット数はなんと150しかない。つまり、全編ひたすら長回しなのである。本当にびっくりするくらいワンショットが長い。固定カメラだけでなく、円周においても同様だ。しかし、不思議と見入ってしまう。それは、極めて精緻な構図で作られた画作りの力が強いのだろう。

そう、構図についてが特に印象深い。文句がない。例えばそのままスクショに撮って静止画の写真としても完璧なのである。光と影、の本質を深く理解していなければできない芸当だ。ほぼ全カットにおいてそれが共通しているので、ただ眺めていても見入ってしまう。
あとは人が歩くシーンがやたらと多いが、これも長回しのためひたすらに何もない空間ばかりが映し出され、劇中の村がいかに虚無であるかが自然に強調される。

また、音については「反復」が基本となっている。雨の音、足音、そしてBGM。酒場の長回しは酔っぱらいの戯言やタンゴなど、反復が強調されるが観ててどうかなってしまいそうである。最後付近の鐘もそうだが、反復はある種の苦痛や、視点の変化を伴う。映画の構成も反復だ。

まだ感想がうまくまとまらない感じがあるが、とりあえずここまで。
単純な長さでいえばこれまで観た中では確かアンゲロプロスの「旅芸人の記録」の230分が最長だったが、ぶっちぎりで更新した。まぁなかなか7時間はあるものではないが…
何度も通して観ることはないだろうが、色々と補完したのちにまた時間をおいて鑑賞したい。
砂