故ラチェットスタンク

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

4.0
『俺を吊るしてくれ。』

 自業自得にマッチポンプ、一人相撲で踏んだり蹴ったりしながら、街に揺られて右往左往。その間にいくつかの奇妙な交流があって、会話にそっと耳を澄ませたりする。外は刺すように寒くて霜焼けが癒えない。家の中は暖かくて安心したりする。摩耗に摩耗を重ねていって、ヤケの末にぶん殴られた身体は酷く痛くて、それでも猫は可愛いと、寂れた路地裏で思いけり。クリフ・ブースの「I try.(努力してるよ。)」やピーター・パーカーの「Trying to do better.(努力してます。)」が彼らの現状へのアティテュードとして好きなのだが今作も最後の吐き捨てるような、呟くような別れの言葉が好きだ。ウェットでもドライでもない。晴れることのない苦しい道のりへの、そういう言葉が。