半兵衛

0課の女 赤い手錠の半兵衛のレビュー・感想・評価

0課の女 赤い手錠(1974年製作の映画)
4.0
過激なアクションとポルノの旋風が吹き荒れていた東映東京で、徒花のように咲いたエクストリームなアクションポルノ映画。狂暴すぎて普通の犯罪者よりもたちが悪くなっているチンピラグループ、誘拐された政治家の令嬢を極秘に救うべくチンピラたちをリンチして殺害したり自分の犬として扱おうとする極悪非道な警察といった日本のアクション映画のなかでも救いようのない非情な世界観のなか、彼らに翻弄されつつも静かに耐え抜き最後に反逆にうってでる潜入捜査官・零のたくましくも儚い存在感が美しく際立つ。彼女が身につける赤を基調としたファッションも、演じる杉本美樹のぶっきらぼうな美しさにぴったりでバイオレンスな地獄のなかで花のように咲き散らす。

ひたすら本能のままに暴れる郷鍈治のチンピラ、容赦ない暴力で犯罪者を追い詰める室田日出男の刑事という二人の狂暴なキャラクターが最高で、彼らから出る異様な熱量の演技とアクションが通常のアクション映画とは違うダークな雰囲気を醸し出している。この二人が取りつかれたかのように暴走していく終盤は圧巻。

強風が吹き荒れる廃墟での刑事とチンピラ、主人公の零が繰り広げるラストの死闘は格好よさといいささくれたバイオレンスの触感といい邦画史に残る名シーンと言っても過言ではないと思う。ラストのキレあるカットにも痺れる。

野田幸男氏は『不良番長』シリーズをはじめとする東映の娯楽作品を多く手掛けたいわゆる職人監督で、作家としての作品は残さなかった(でも実は京大出身で、この映画に出ている戸浦六宏とも親しかったりする)ものの『0課の女 赤い手錠』を手掛けたことで日本の映画史に足跡を残したと言える。ちなみに野田幸男監督はテレビドラマも数多く手掛けており、特に『特捜最前線』の『ストリップスキャンダル!』は長坂秀佳の脚本をストリップの濃厚な描写と雨中での格闘などといった野田監督がポルノやアクションで培ったスキルを最大限に生かし見事に映像化していた傑作に仕上がっている。風間杜夫と大滝秀治というハードボイルドとは無縁そうな役者からポテンシャルを引き出し、復讐のため地獄に墜ちる男とそれを止めようとする刑事として成立させる演出も素晴らしいの一言。
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