ゆうひ

子宮に沈めるのゆうひのレビュー・感想・評価

子宮に沈める(2013年製作の映画)
3.9
これよりもっと大きくなってからネグレクトされた立場から見て、郷愁を感じるくらいにはリアルなエピソードや空気感だった。
私は、潰れたカップ麺の容器にセロテープを貼ってお湯を入れてみたり(湯漏れして作れなかった)、味の素を舐めて凌いだり、ハサミで缶詰を開けようとしたので、同じエピソードではないけどすごくわかる。
知らない大人が自分たちのことを邪魔かのように話してるのを暗闇の中で聞くのも懐かしかった。

健康や命の危機について可哀想だという感想がたくさんあったけど、一体験者からしたら、帰ってきたお母さんが優しく話してくれないことが何より飛び抜けて一番悲しい。だから、お粥を食べさせてもらっているシーンが私には一番悲しかった。ピクニックも海も苺のケーキもいらないから、ただその時間が永遠に続けばよかったと思う。グロとか汚いシーンよりも、それが一番苦しかった。

想像以上にリアルで驚いたからこそいくつか言いたい……
子どもの首や足首などはもっと黒くなると思う。あと、蝿が涌き出すと白い壁も糞で汚れるし、マヨネーズの口にはびっしり産卵されると思う。まぁこれは、短期間で一気に堕ちたのと、遺体という産卵場所があったからそうならなかったのかな。あと久々に帰ってきた人は、異臭で鼻呼吸を避けると思うので、口は開きっぱなしになると思う……地域もわからないのであれだけど。窓を開け放って長い時間換気してたけど、すぐに異臭で苦情が来ると思う。それ以前から子どもの泣き声などで目をつけられてるだろうし。

帰宅した母に「遅いよ」と縋っていた姿が哀れとの感想を見たが、実際子どもはこんな風になっても縋るどころか、児相などの部外者に介入されることさえ嫌がる。母親と引き離す敵だと感じるから。自分が人権無視の異常状態に置かれているということも認識しない。例えば子どもの年齢次第では世間は「〇歳なら自分で〇〇くらいならできたでしょ」と怪訝に思うこともあるかもしれないけど、普通を見て育ってないのに自立しないし助けも求められない。そういう発想がない。みんなだってたまに授業で聞いたくらいのことを生活で実践できないと思う。何ならタテマエとかファンタジーだと受け止める。私は子どもの頃、毎日自炊してる家がこの世に存在すると思ったこともなくて、サザエさんの世界だと思っていた。だからもしかしたらガムテープでドアを閉めてなくても、性格によっては外になんか出なかったかもしれないと思う。

そういう意味で、タイトルが秀逸だと感じた。育てて捨てるというよりは、育てられることなく沈められるのだから。
ゆうひ

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