コキジ

子宮に沈めるのコキジのレビュー・感想・評価

子宮に沈める(2013年製作の映画)
4.0
構図が独特なんです。まずそこが気になりました。(※後述)

大阪2児餓死事件を基にした映画とされていますが、ディテールがかなり違います。
事件は風俗嬢ですが、こちらの映画では良き妻であり良き母です。
事件では2人の子供は餓死していますが、映画では母が一旦帰宅した時には上の女児はまだ生きていました。「ママ遅いよ」
映画ではその生きていた女児まで殺めてしまうのです。
そして更に自ら毛糸編みの棒で堕胎までします。その赤い毛糸はマフラーとなって、寄り添って座る2人の子供の首に巻かれていました。自分はここが一番胸打たれました。

描写がリアルです。というか本物だと思います。
最初のほうの幸せの象徴とも言えるラップに巻かれた美味しそうな黄色いオムライスも、最後のほうの下の男の子が亡くなってから部屋に舞い始める無数のハエも。
女児が飢えを凌ぐ為に飲むマヨネーズも。缶詰を開けようと四苦八苦する包丁だけはフェイクだと思いますが。あんな使い方は危ないし。
女児が漏らしてしまうウンチも流石にフェイクでしょうが、そんな事は気にならない程悲しいです。

一番最初に戻りましょう。独特な構図。
最初はただ変わった撮り方をしてるなと思っていました。
妻の求愛を拒絶する夫は口から下とか、悪い女友達が大きな声で尋ねて来てもテーブルの脚越しに下からとか、でも初めて男遊びをしたであろう日に帰宅した母の、それまでとは似つかわしくない太ももあらわなスカートを見て確信しました、これは子供の目線だと。
最初の洗濯物を干していたのも確か腰から下だったとか。
思い出してみれば2人の子供以外、母は別として殆ど顔がまともに見えていないのです。誰も。

胸糞とか言われていますが、自分はそうは思いませんでした。こればかりは人それぞれでしょう。
堕胎した身体を洗って、子供2人の亡骸をビニールシートに包み、裸で風に揺れるカーテンの間から外を眺めるラストシーンも印象的でした。
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