ロクシ

子宮に沈めるのロクシのレビュー・感想・評価

子宮に沈める(2013年製作の映画)
2.6
子供の年齢が近いので見てしまった。
大学の授業や学校の道徳で見させられたっていうTweetも見たんだけど、何を伝えたくてこの映画を生徒に見せるのかわからない。
虐待が起こらないようにするためにはまず実際の養育者である母親を救わなければならないのに、この映画は母親の詳細な事情はあえて見えなくしてある。
ただ固定カメラで放置された子供を見させられるだけ。

自分は24時間子供とべったりなので、ママを思って一人ぼっちの我が子の姿なんて想像できない。
子供のヒステリーや理不尽な仕打ちにイライラした時にこの映画を見ると、辛くて子供がとても愛おしくなる。
子育てに疲れてる人が自分を客観視するために見るのはいいかもしれない。
自分はこうはならないぞという反面教師的な見方をするために。

この映画の母親は、最初はものすごい手の混んだお弁当を作ったり、夏なのに編み物をしているのに、突然真面目そうな夫に捨てられ、昼間の仕事と育児の両立にも限界を感じて水商売を始める。
そこから食事や掃除が手抜きになり、彼氏をたまに家に呼ぶも大事にされない。家にも来てくれなくなる。
とうとう母親はチャーハンを作ってお姉ちゃんにかわいい服を着せ三編みをして、家に置いていく。
最初があまりにもいいママ像過ぎたのでギャップに違和感があった。実際の事件の犯人は複雑な生い立ちで元々病んでいた。

実際の大阪2児餓死事件の犯人だった下村早苗は、自らもネグレクトの経験に合い、精神疾患の母や父にも大事にもされず、家から知り合いの家に預けられたそう。不良時代にレイプ被害に合った経験あり。
高校卒業後、妊娠結婚。自分不倫で離婚になったあとも子育てを実の両親や元夫にも頼れず、23歳の時に手に負えなくなりホストに逃げたとのこと。
家庭環境で愛情不足だった女の子は、成長すると愛情を男性に求めるようになる。時にセックスの一時的なつながりで安心感を得てセックス依存症になったりもする。
そうすると、妊娠してしまう。
自己肯定感の低い人間は自分の体を大事にしない傾向があるので、男のためにコンドームをつけなかったりする。
赤ちゃんができると最初は喜んで育てるが、人を頼れない育児は、はっきり言って地獄そのもの。
乳幼児は見た目は天使のようにかわいいが、親は子の理不尽な要求に振り回され、虐げられ、可愛さをとってしまえばただの奴隷なのだ。
ある意味精神障害を抱えた少女が出産し、他人に頼れない育児をすると必ず崩壊する。そして愛情を男性に求める。
誰にも助けてもらえない手に余る子供は、まるで世話しきれなくなった野生動物。
こっそり捨てるわけにもいかない。
家にこっそり隠して男の愛を求めに行く。
男といると安心する。子供から解放される。
そんな中でこういうネグレクトの事件が起こるのではないだろうか。
セックスと子育ては結びついているのに、「女の快楽」と「母親」は対局な位置にあるのが問題。男に愛されたいと思う女は聖母になれないのだから皮肉だ。

だからまず救わないといけないのは心の幼い母親。
この映画は母親側の問題はスルーされているので、ただかわいそうで苦しいだけの映画になっている。
編み物のかぎ針で墮胎しようとするシーンはリアルさにかけて興ざめ。膣が傷つくだけ。
無駄にエロいシーンを入れようとするのも男が監督だからなのかなと思ってしまった。
ネグレクトをしたのは母親だが、母子を捨てた父親はもちろんだし、未熟な母親の両親も同罪だ。
セックスで妊娠した幼い母親には行政の保護観察が必要だと思う。
ロクシ

ロクシ