ハマジン

ノスタルジアのハマジンのレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
4.0
キチガイの意志を継いで「世界の救済」を試みる異邦人のキチガイの話をキチガイの監督が撮ったマジキチ映画。過去/現在、夢/現実だけでなく、正気と狂気の境にまで揺さぶりをかけてくる音響と照明の精度が半端ではない。摺り足状のトラックやズームで常に動きつづける、いわゆる「絵画のような」という常套句的形容詞からは大きくかけ離れたカメラワーク(撮影ジュゼッペ・ランチ)の静かな狂いっぷりもヤバい。
世界の終末を恐れ家族を7年間監禁し、「本当は世界を救わねばならなかったのだ」と目覚めた挙句、ローマの広場のマルクス・アウレリウス像の上で焼身自殺を図る誇大妄想狂の男にエルランド・ヨセフソン。『サクリファイス』の前哨戦をここでやっている。ガソリンをかぶり火だるまになった男が騎馬像から落下し、ひしゃげた『第九』のレコードがかかるなか、断末魔の絶叫をあげながら事切れるまでをカットを割らずに撮ったショットが最高。
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