このレビューはネタバレを含みます
初っ端から変な言い方になるんだけど…
思考が揺蕩うような本だとか、こういう作品って、自分ひとりでは辿り着かない場所に連れて行ってくれますよね。
その人の表現、感性に触れなければ、思い浮かぶことのなかった感情や思考が生まれる。
監督の意図したものを受け取れていなかったたとしても…思考の拡大や、変革を感じる事のできる、この瞬間は得難いものです。
作品を観た後で、勝手に納得したのは…
『ノスタルジー』と『平和への願い』って、似ているんだなって事でした。
もう、戻れない。
そんな諦観もあって…
だけど…懐かしく、尊い。
平和って…無邪気で、誰かを嫌うことも、諍うこともなかった時間のことでしょう?
歳を重ねて、たくさんの人と関わって、物事を知るにつれて…遠ざかってしまった平穏があるなって。
もう二度と『平和』には戻れない…
遠い故郷みたいな感覚。
もしかすると監督にとってのそれは…
『祖国』とか、記憶の中のご両親。
子供の頃の自分だったのかな。
だから私には、アンドレイとドミニコ、時折現れる子供たちも…なんだか監督自身に思えました。
そんな風情で、それぞれに語り掛ける言葉を聞いていると…自問自答にも思えたしね。
若くして亡くなってしまったけど、もし監督がまだ生きていて、自分自身でこの作品を観るとしたら…おそらくタイムマシンみたいに思えるんじゃないかな。
暑い夏の終わりを告げる涼風だとか…優しさや厳しさを伴って、様々な感情を発露させる源泉。
精神が変容していくように…
置いていったものも、いつしか形を変える。
かつての宝物は、ボロボロになっていたりするでしょう?それは自分がそれを大切に握り締めていて…たくさん触れて過ごしたから。
傷んで、ほつれて、汚れてたりする。
他人にはゴミ同然に見えても、その人には時空を超える特別なもの。
『1+1=1』
何かが加わって変わっていくけれど…
今も変わらず、大切なもの。
そんな意味にも、考えることができた。
いやー…本当に叙情がすぎるね😅
心が引っ張られて、なんか涙が出た(笑)
もし私だったら…亡き父に教わったレシピで料理を仕込んでいる最中だとか…いつか娘が大きくなって、口げんかしてる最中に、そう言えば私も母に同じことを言われたなって苦笑いが浮かぶ瞬間だとか…
いつか見るだろう『郷愁を伴う幻影』
監督の作品って、すごく芸術的ですよね?
私が思い出す光景は、あんなに綺麗じゃなくて、普通で庶民的なんだとは思うけど…
きっと、監督の描くどの画よりも
美しく見えるんだと思う。
大人になってから聴くと、
やけに響く歌とかあるよね?
たぶん、そんな感じ。