ひれんじゃく

グランド・ブダペスト・ホテルのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

4.0
映画オタクが考えたかのような超豪華キャストが湯水のように使われててまずそこで歓声を上げてしまった。エイドリアン・ブロディとウィレム・デフォーのろくでもないコンビ最高です。以下少しネタバレ。



















ウェスアンダーソンの作品はファンタスティック・Mr Foxしかいままで見たことがなかったから、実写(?)はこれが初。人物や注目させたいものを悉くど真ん中に置くカクカクの異様に人工的で整えられた画面が終始続き、振り切り方に感動するとともに居心地の悪さすら感じた。パステルカラーの色合いが美しい。メリケンサックをはめさせたの、単にウィレムデフォーがガラの悪い連れだっていう表現をしてるだけではなくて、電話してるシーンとかで顔が映らなくても誰と誰が会話してるのか分かるようにするための演出だと気づいてあまりのうまさにびっくりした。このシーン、これまた机を真上から、手だけが画面に入り込むように撮るからおおすごい!!!と興奮。

これ本当にコメディやってるのか?ってくらいリアクションや表情に乏しい登場人物たちを見ながら荒木飛呂彦を思い出すなど。真正面からカメラを向けながらそれでいて人物たちの表情はあんまり変わらないの、なんというか斬新だなと個人的には思った。おそらく注目させたいのは表情ではないのかな。

途中から戦争の足音が響き始め、まさかまさかのゼロが難民でグスダヴが殺されるっていう話の割には(私的には)その重苦しさを一切感じさせない作りになっていたのが興味深い。反戦のメッセージ自体詰まっていないような気がした。そういう話はウチにはないんで他所でやってくださいみたいな。どこかで表現されていたら申し訳ないけど。こんなに「単なる事実」としてあっさりと受け流される戦争表現ってあるんだ…と思った。共感できないように作っているような。まだこの監督の映画はこれ含めて2作品しか見てないのであれですが、「フィクションで現実を表現する/切り込む」というよりは「フィクションを徹底的にフィクションのまま貫き通す」ことに主眼を置いているのかな?というのが主な感想でした。感情移入はさせずにあくまで作り話としてやっていこうみたいな部分を強く感じた。
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