Torichock

グランド・ブダペスト・ホテルのTorichockのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます


ウェス・アンダーソン監督の最新作です。
前作、"ムーンライズキングダム"を友達の家で爆睡してそのほとんどを見過ごし、"ダージリン急行"をまだ観ていない僕にとっては、ほぼ処女鑑賞に近いウェス・アンダーソン作品でした。

まず何より先に、この映画の色使いです。
本当にどのシーンをとっても、ビビットでかわいらしい色使いがたまらない味わいを出しているし、ウェス・アンダーソン特有のシンメトリーで絵画のように平面を常に意識したシーンは、とてもセンスを感じます。
僕は今回、本作をみながらぼんやりと思い浮かべ機そそあたものは、頂き物でもらえるような缶に美しく整列されて入ったクッキー

とか、
色が綺麗に揃ってピシッと並んでるマカロン

を思い浮かべていました。
師匠が"早い話、ウェス・アンダーソンは、オシャレ"と仰ってたんですけど、まさにそれって感じです。
例えば、今年の春に公開された"LIFE!"でも、序盤の幾つかのシーンがウェス・アンダーソンっぽいなぁと思っていたんですが、パンフレットには意図的にそういう画作りがされてました。
つまるところ、僕のような白帯くんでもウェス・アンダーソン!って分かるんですから、確立された映画つくりだと思います。それに、やはりここまで徹底した画作りには、潔癖とも言えるくらいのこだわりと、センスを感じずに入られません。
とはいえ、同じ画面構成がずっと続く上での会話劇なので、淡々と物語が進んでいくように見えるし、中盤で一瞬うとうとする時がありました。でもこの淡々さが、軽快でサッパリとした作風と言えば作風なのかもしれません。

また、町山智浩さんの映画批評を聞いたことにより、本作の深みがぐっと増しました。
ここからは自分でネットサーフィンしめ調べたんですけど、原作のシュテファン・ツヴァイクという方が生きていたウィーンは、オーストリアのハンガリー帝国というところで、ユダヤ人の差別を禁止していたようなユートピア的な華やかで美しい国だったらしいんです。
しかし、そんな本作の画のように美しい国も第一次世界大戦の波に飲み込まれてしまう。そして、こんな世界的な大虐殺はもう二度と来ないと思っていた矢先に、ナチスによるユダヤ人の虐殺を知り第二次世界大戦を前に、自分が信じていた世界はすでに失われたと悟り、シュテファン・ツヴァイクは自殺をしてしまったらしいんです。
そして、この作品が1932年と1960年代と現代の3つを映したことで、時代が移り変わっても、その本質はなんら変わっていないんだよ?と伝えられたような気がします。
ウェス・アンダーソン監督が、シュテファン・ツヴァイクにインスパイアされて本作を作り上げたことから、色使いや可愛らしい画作りと軽快でコミカルなテンポの裏には、とても深いテーマが隠されていたということ知ることが出来ました。

しかし、そんな裏テーマや背景など知らなくても、華やかで可愛らしく美しい映像はたまらなく素敵ですし、ゲラゲラ笑うんではなく、クスクスと笑えるグスタフ&ゼロのコンビは、バディ映画としてもとても愛らしいコンビとして輝いてました。
ちょっと意地悪で、ちょっと残酷で、ちょっと下ネタもあるけど、なんとも可愛らしい映画。
これぞ、デートムービーに最適かもしれませんな!
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