みてべいびー

クラッシュのみてべいびーのレビュー・感想・評価

クラッシュ(1996年製作の映画)
3.8
興奮するためなら、命をも惜しまない人たちの話。共感はできないけど、ハマっちゃったらやめられなくなるんだろうなとは思った。「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」ってこういうことなんかね。
平凡な人が次第に倒錯しちゃうんじゃなくて、元から結構その気はある感じだから、ハマっていく様子がスムーズすぎて面白い。無駄な会話も説明もないけど、その性癖が日常の一部になっていって、どんどんエスカレートしていく過程が丁寧に描かれていたと思う。ただ、さっきまでいた人が死んでも当たり前のように素通りするから、あれあの人死んだんだよね?ってなる笑。性にめっちゃこだわる割に、生には執着がない。ハリウッドスターの事故再現マニアには笑ってしまったけど、もしかしたらあれが一番リアルかもしれない。欲張りなことを言うなら、Holly Hunterのキャラクターについてもう少し掘り下げて欲しかったかな。
カメラワークが美しすぎて、何一つ下品に見えないからすごかった。調べたら、帝国の逆襲とか撮ってるPeter Suschitzkyという撮影監督らしい。車体の艶からフロントガラスの反射、革張りのシートまで、めちゃくちゃ計算され尽くしてる。なんなら人より車がエロく見えた。運転する人を映すとき、ほぼ運転席側しか映らなくて、サイドミラーが中心にくる感じのショットがかっこよくて非常に好みだった。お気に入りは、車が高速道路を走る中、ヴォーンと娼婦の女性がバックシートでセックスするところ。トンネルの電灯に照らされたお尻が美しかった。
Rosanna Arquetteがめっちゃいい味出してる。車の試乗に行く場面が好き。あのグロテスクな太ももの傷痕もいやにセクシーに見えてしまったから、私が傾倒する日もそう遠くはないのかも。最初に事故ったときのJames Spaderの脚の器具の痛々しさにも、それなりに人を興奮させる要素があるのはわかる気がしたし。正当化するわけではないが、性的嗜好なんて異常も究極も表裏一体よな。それで愛を確かめ合えるなら、本人たちにとっては幸せなことだし、邁進していけばいいと思う。他人に迷惑かけない程度にね。
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