車や異常性癖といったキーワードが並ぶためかのチタンと比較されがちなこの映画ですが、映画としてはこちらの方がはるかに良いといわざるを得ない。
始めから終わりまでまともなシーンなんて存在しないが、クローネンバーグ博士のメスのごとくスマート且つ鋭い演出はその狂気を淡々と、遠慮なく、そして何よりも恍惚さをもって我々に叩きつける。その果てに「この描写でなければならない」とこちらの考えなどお構いなしで納得させてしまうのだ。そしてカメラや音楽にも余計なことを思わせる一片の隙もない。映画を観て何を考えるか、どういう感想を抱くかが求められる現代ですが、それ以上に何を考えさせるか、ここに映画の真の味があるのではないか。観客の脳味噌で自己完結する映画ばかりで先があるのか。不安は止まない。