MissyEllio

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーのMissyEllioのレビュー・感想・評価

4.5
アメコミは、風刺の機能を持っていますよね。本作も然り。そこで作られた背景をちょっと書きたいと思います。

風刺とは、権力・権威に”内”から表現による抗議(現フランスの、”外”や少数派に向ける風刺は、受け入れがたいモノに対する攻撃でしかない)。

このキャプテン・アメリカはそんな風刺の効いた、それでいてエンターテインメントにしっかり昇華させた、良く出来た見事な作品でした。

『ウィンター・ソルジャー』とは、ベトナム戦争の帰還兵が、戦地での残虐行為の数々を公の場で語った『ウィンター・ソルジャー公聴会』を示唆したもの。正義の為と信じ命をかけ、本来英雄として迎えられるはずの兵士は、帰国後に悪人の様な扱いを受ける。この辺りのロジックが、本作のキャプテンと符合するところですね。

この公聴会は『ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白』というタイトルでソフト化されていますので、興味のある方は是非。因みに、現国務長官のジョン・ケリーも参加しています。

次に、全て(社会をも)をコントロール下に置こうと暗躍するS.H.I.E.L.D.高官。そのS.H.I.E.L.D.の本部の近くにウォーターゲートビルが! これは『ウォーターゲート事件』の暗喩。ニクソンが恐れ暴走した事件の性格をまんま持っているんですもんね(S.H.I.E.L.D.高官に『コンドル』『大統領の陰謀』のロバート・レッドフォードを配置する辺りがニクい!)

【強い愛国心が仇となる悲哀】【権力の肥大化への警鐘】この二つを、現実社会に起きた出来事を下敷きにする事で、それでも正義を信じ戦う主人公に感動を覚えるんですよね。原作の”風刺”を現代に置き換えて、上手いこと構成・脚色したもんだと感心しましたよ。

こう言う背景に、触れた媒体が少なかったのが当時気になり(秘宝さんぐらいかなぁ)、そういった記事を書いたんですが、帰ってきた返事は「日本人には分からないから端折れ」と。以前、某有名監督が「日本の観客は理解出来ないから」とハナからバカにしてましたが……。

確たる検証もなく「理解できない”だろう”」と決め付けて物事を測りやがって怒。頭にくると同時に、情けなくなったもんです。

……σ^_^; 脱線しましたが、当時の事件や社会状況を揶揄し作られたということを、知っているのと知らないのでは、大きな違いがあると思ったので、ダラダラと書かせてもらいました。

アメコミ映画、侮るなかれ!笑
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