井出

白痴の井出のネタバレレビュー・内容・結末

白痴(1951年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

Mの曲。亀田はこの人が悪人だと分かってるんだな。面白い演出。見たもの、聞いたもの、読んだものがよければ、あっさり、そのまま用いる、黒澤の柔軟さ。今回もしっかり、小説に従っている。映像化したらどうなるか。ドストエフスキーとかの小説を映像にするとき、凡人にはやはり、映像を作るのも、小説を書くのも、やっぱり不可能だと思う。それくらい、人間の体と心は、言葉で記述しづらいし、映像で表現しづらい。天才ぶりに程度の差こそあるものの。
そして構図の妙。これもやっぱり黒澤明。香山荘の構図が素晴らしい。空間的だけでなく、音で描かれる構図、カオス。そこから炙り出される狂気。演出と演技が調和的で、相互に高めあう。それに秩序を与える存在、亀田。ジャックタチに通じるような。
小津以外で初めて見たけど、原さんも、やっぱすごい。この女優を超える人は出ているか。表情一つ一つが、筋肉の動き一つ一つ、複雑なハーモニーを奏でて、感情を表現する。それを言葉には表現できない。そして、三船敏郎。原さんが努力なら、三船さんは素質の割合が高い。狂う演技、これもまた、何とも言いようがない。彼もまた、死を見ている。この人たちは天才。目で演技する役者たち。
100万円札の焼ける音。一つ一つの音響も丁寧。オルゴールの切なさもすごい。
そして死の描き方。最後の10分。見るべき。たがが外れるとは違う。死を見たとき、生きるために要らないものを捨ててしまうんだ。憎しみや嫉妬など。
戦争の怖さを知らなければ分からない。怖いもの見たさもあるが、知ってる世代が言うんだから、ない方がいいんだ。
井出

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