おいなり

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのおいなりのレビュー・感想・評価

4.2
たぶん世界中のVol.3観た人がやってるとは思うけど、いてもたってもいられず一作目から見返しています。
スパイダーマンと違って、本筋の1、2だけとりあえず観とけばいいという、敷居の低さもガーディアンズの魅力。でもインフィニティウォーとエンドゲームでガモーラ周りに起こった諸々を説明しないと、初見さんにはいきなりVol.3でガモーラが別人になってて意味わかんないし、かといって表面だけアベンジャーズ説明しても伝わんないだろうし。ええいめんどくせぇ全部観ろ。30作。……に収束しがちなMCU布教活動。



金目的で仲間を裏切った宇宙のコソ泥スターロード、宇宙最悪の戦争主義者ロナンの手下のガモーラ、賞金首ハンターで日銭を稼ぐロケット&グルート、家族の仇に固執するあまり周りを窮地に陥れるドラックス……。初期はアベンジャーズも大概だったけど、それに輪をかけてデコボコで身勝手な即興寄せ集めチームが、少しずつ仲間になっていく過程が描かれる第一作。

当時大きくなり始めていたMCUにおいて、誰も知らないマイナーヒーローチームの作品をこのジェームズ・ガンというまだ無名の男に委ねる采配、マジで未来でも見えてんの???ってくらい有能すぎて怖いぜMCU。



この一作目を観てると思うのは、ジェームズ・ガンという男の才能はもちろんだけど、スターロードを演じたクリス・プラットの「ハマり」具合。
エンドゲームでも弄られ倒した伝説のオープニングにはじまり、最後までストップ高で好感度が上昇していくピーターという男。高潔でもないし、昨日寝た女の子の名前も忘れちゃうプレイボーイ。天地がひっくり返ってもムジョルニアは持ち上げられなさそうだけど、でもだからこそ憎めないその等身大なキャラクター性と役者との同化ぶりは、MCU随一。
本作のキーアイテムであり、MCU的にも最重要のマクガフィンである「オーブ」を、手を滑らせて落としちゃうシーン。緊張感のある場面のアクセントとしてスターロードの性格を表すいいシーンなんですが、実はクリスが天然でやらかしたNGシーンをそのまま採用したとかいう逸話、マジでちゃんとスターロードやなぁって感じで大好きです。滲み出ちゃってる。

もちろんガーディアンズの面々全員が良いんだけど、ジェームズとクリスという二人が起こした化学反応、いやビッグバンとでも言うべき巡り合わせは、ハリウッドに起きた奇跡のひとつだとすら思う。大袈裟じゃなく。

しかしほぼ3単語しか喋らないキャラの声優にヴィン・"ドミニク"・ディーゼルを起用してるのも、いまさらだけどすごいですね。実際は誰よりも「美味しい」役なのはシリーズ通して観た人なら知っての通りですが、それを引き受けたヴィンの懐の深さも素晴らしい。ヴィンの下腹に響く低音ボイスの良さ。



ガーディアンズのキャラの濃さに霞みがちだけど、映画としてはオーソドックスなスペース・オペラ。
銀河を武力で支配しようとする悪の帝国、まだ何者でもない男が手に入れた世界のパワーバランスを変えるようなアイテム、集まる仲間、派手な空中戦……。スターウォーズをはじめとするSF作品のお約束を丁寧に自己流アレンジしたような作りで、宇宙ものにしてはめちゃくちゃ観やすい。何度も観れる作品。

そのライトさがいいんよガーディアンズは。そういう意味では2や3は結構キャラクターの人生に関わる重めの話が中心になっているので、この1が持つ「軽さ」の魅力は唯一無二。
なので、もし無人島にMCU作品の中から一本だけDVDを持っていけるとしたら、たぶん結構即答でこの映画を選ぶと思う。ウィンターソルジャーも好きだけど、何度も観るなら間違いなくGOTG1。



当時でもMCUトップクラスに面白い映画だったけど、3を観た今だと、キャラクターへの目線もまた違ったものになって二度お得。
公開時点では、もちろんロケットの過去に何があったのかは誰も知らないのだけれど、彼の起伏の激しさの裏にある悲しみ・孤独・怒りを知った今、ひとつひとつのシーンが違う意味を持っているようにすら見える。
ロケットがガーディアンズという新たな仲間と出会えて、本当に良かったなと、しみじみ思う。

ピーターが本作で母親から受け取った「音楽」という贈り物が、紆余曲折を経てロケットに受け継がれていく過程が美しい。
選曲も全部最高。アメリカのオールディーズって、歌詞もメロディもカッコよくていいですね。
おいなり

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