菩薩

新宿乱れ街 いくまで待っての菩薩のレビュー・感想・評価

4.4
場違いな男こと内田裕也がイキってマンスプかました後に「ここは酔っ払いの街よ(笑)」と返されるのがまさに新宿文化の終焉を物語っているし、痛々しいもはや青春とも呼び難い日々が過ぎ去り足を引きずってもゴールデン街の看板の下には戻れないラストが物悲しさを語る。ドラムソロの簡素な劇伴に対しジュリー、岡林信康、石川セリ等錚々たる面子の歌謡曲選曲が秀逸。荒井晴彦本人の投影らしいなんともケツの穴と器の小さい売れないヒモシナリオライターとそんな彼からどうしても離れない健気な女。狭苦しい部屋の中で汗だくになりながら繰り広げる格闘的SEXから腰が抜けたからとおんぶをせがむ一連の流れ、そうして一人本当は連れて行って欲しかった海に赴き腹の中をスッキリさせ別れを決意した後の扉越しのさよならがエモ過ぎる。顔と名前覚えられないマンからすると冒頭での人物紹介は非常に有難い。今とは違う新宿のむさ苦しさ、それなのに何故か美しくすら見える。
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