シンタロー

熱き夜の疼き/クラッシュ・バイ・ナイトのシンタローのレビュー・感想・評価

3.2
フリッツ・ラング監督×バーバラ・スタンウィック主演。
10年ぶりに故郷の漁村に帰ってきたメイ・ドイル。不倫相手が亡くなり、遺産もろくに貰えなかったメイを、漁師の弟ジョーとその恋人ペギーは迎え入れる。メイは、弟の船の船長ジェリーと交際を始める。お人好しなジェリーは、父親と叔父の世話をしていて独り身だった。ジェリーは、親友で映写技師のアールをメイに紹介する。アールの妻はショーガールで別居状態だった。ジェリーと真逆で、スマートな自信家のアールに誘惑されるメイ。惹かれる気持ちを抑え、安定を求めてジェリーと結婚するのだが…。
ノワールの鬼才フリッツ・ラングとしては異色の不倫メロドラマ。邦題はまるで日活ロマンポルノ。メイとジェリーの結婚式までの前篇は、メイのこじらせ女ぶりに辟易。"実家なんて行き場のない人が逃げ込む場所よ!""結婚するなら吹雪や洪水と闘い、世界から守ってくれる人よ!""男なんて小柄で神経質なスズメか、大柄で心配症の熊よ!""また誰かを愛せたら何でも耐える!私の歯をあげてもいい!"等々、戯言のオンパレード。演じる大女優バーバラ・スタンウィック撮影時44歳が、自己中中年女を皮肉たっぷりにねちねち演じて大したもんです。若手時代のピチピチなモンローが、さらにババァぶりを引き立てるという効果を発揮してます。可愛い娘グロリア出産からが後篇。真夏の夜に疼くメイの肉欲を、海岸に押し寄せる波飛沫で表現するなんて、この邦題はまんざらでもないのか。筋肉質なタンクトップによろめく人妻、バカバカしい。閉鎖的な漁村は噂で持ちきり。知らぬは寝盗られた本人だけ、ヒデえな。赤ん坊を溺愛するジェリーの描写はありますがメイは一切なし。それどころか乳飲み子放って不倫相手とデート。いい歳して、いつまでも恋していたい、女でいたいとか、監督は徹底して悪意を持ってヒロインを描いてるようにしか思えない。アールもとんでもない最低野郎。こんな2人、ガッツリ罰してもらいたかったので、この結末はかなり物足りない。
主演はバーバラ・スタンウィック。様々な役柄をこなす演技派ですが、オスカーはノミネート止まりでした。芝居だけでなく、ルックスや声質など、60〜70年代のジェーン・フォンダやフェイ・ダナウェイらに影響を与えたと思われます。ロバート・テイラーとは人気のカップルでしたね。いくら晩年とはいえ、こんな役よく引き受けました。ジェリー役のポール・ダグラスは大熱演で、誰が見ても応援したくなるような、冴えないけど優しい男をうまく表現してます。逆にロバート・ライアンは最低過ぎてびっくり。元々あまり好きな役者ではなかったけど、この役は酷いです。マリリン・モンローの下積み時代の作品の中では、比較的マイナーだと思いますが、可愛らしい役で、良心的に描かれてると思います。缶詰工場で働くモンローは希少です。
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