映画は遠い過去のはなし

無常の映画は遠い過去のはなしのレビュー・感想・評価

無常(1970年製作の映画)
3.2
◎実相寺昭雄の日本三部作の一つ、デビュー作にあたる。「哥」と同じく実相寺らしい演出と雰囲気の作り。独特の効果音とバイオリンの旋律。
薄暗く迷路のような日本家屋。人物のズームアップ、畳に反射する光。
カメラの縦横無尽な引きと寄せ、上から下から、能面鬼ごっこの時の横移動まで。凝りに凝った画面構成。これぞATG。

◎アンチモラルなエロスと対比して映し出される石像を通して描かれる仏教的無常観。
主人公と僧侶との押し問答は正にこの作品のハイライト。極楽、死後の意識の否定、仏教の欺瞞を説く主人公。タジタジで逃げ腰の僧侶。

◎正夫の数々の悪行。近親相姦、偽りの結婚の画策、書生の自殺、師匠の妻との関係、殺人。

◎終盤の人喰い鯉を掘り起こす滑稽でシュールな展開から、これまで悪魔のような悪びれもない表情だった正夫が急に子どものように無邪気にはしゃぐ様子がまたまた滑稽。
「哥」と同じく石段が映されてエンディングを迎える。ラストに流れる歌がこれまでの雰囲気を断ち切る程に明るくライトなのには笑ってしまった。けど何で?