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無常のbennoのレビュー・感想・評価

無常(1970年製作の映画)
4.6
実相寺昭雄監督、ATG邦画作品…。

こ、これは…始まりからもう好き!! 大好きな表現主義の映像に目を奪われます…。

モノクロ写真を捲る気持ちの高まり…寺院、石段、古い日本家屋、そして仏像のキレッキレの構図…シンメトリーの美しさ…様々なアングルのショット…遠近法を活かしデフォルメした被写体…ちょっとアザとい映像センスが堪りません…。


先日鑑賞したパゾリーニ監督作品『テオレマ』のテレンス・スタンプが今作主人公の田村亮と重なりました…彼と関わりを持つ人物はそれぞれ過酷な運命と向き合うことになるのです…。

物語は…姉と弟の近親相姦…仏師の先生の妻と弟子との交情…義母と息子の痴情…エロスとタナトスが香り立つ、ありとあらゆるタブーを通して若者の虚無の世界を描きます…。

実業家の父の後を継ぐことを拒み、ひたすら仏像の魅力に取り憑かれる主人公正夫(田村亮)…彼には縁談を断り続ける美しい姉の百合が…しかしある雨の夜、ふたりは唯ならぬ関係に…。

やがて、百合は妊娠…正夫は書生の岩下という男との結婚を勧めます…そして自分は仏師(岡田英次)に弟子入りする為、京都へ向かいますが…。


荘厳な寺院とバッハの無伴奏パルティータ第1番…そして繰り広げられる錯乱のエロスとのミスマッチ…。

兎に角エロい…魅せ方もエロい…バックに流れるラジオ体操はとってもシュールで、それもエロい…。

また無音の中、蛇口から滴り落ちる水がポタっ…鈴の音がチャリ〰︎ン…その儚さの効果音はまさに無常…。

ひたすら覗き見るのは我々だけでなく…寺の僧侶の荻野も…煩悩まみれの荻野は密かに百合を慕っていました…。

『快楽主義』の正夫と『禁欲主義』を謳っている荻野の白熱する議論が展開されるシーンは圧巻…。

よくわからない丁々発止の問答…迫力のある正夫にやり込められ、次第に恐怖で顔が歪む荻野…。


快楽は欲を満たした時に得られるもの…
欲を満たすということは悪に他ならない…
極楽に快楽があるわけはない…。

では極楽には何があるのか?? …それは"無"…。


論駁した時の正夫が浮かべた薄気味悪い薄ら笑い…顔に表情は無く口元だけに微笑みを浮かべ…それはまるで仏像のよう…。


そして驚愕のラスト…( ゚o゚!)えぇっ!! そっち…??


ATG作品、他も面白そう〰︎ෆ*



thanks to; レネリーさ〰︎ん ˚₊✯͡ 🜚 *·
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