evergla00

ミケランジェロ・プロジェクトのevergla00のレビュー・感想・評価

2.5
【事実は熱いが映画はぬるい】

ヨーロッパでナチスが略奪した数々の美術品の保存に命を懸けた人々の話。
一応8割は史実(のつもり)だそうなのでネタバレボタンを押していませんが、登場人物の名前などは全て創作です。

集められたメンバーは美術や建築の専門家。
軽く軍事訓練を受けてから戦地へ。

敗戦が濃厚となったナチスが撤退と共に盗品を隠した為、まずは手分けして捜索。

話としては、名だたる芸術品の隠し場所を見つけることがメインでした。敵に渡るくらいなら全て破壊しろという、後世名付けられた「ネロ指令」がヒトラーから出され、また同時期にソ連が「戦利品」として押収していた為、ナチスが破壊する前に、ソ連が横取りする前に、探し出さなければならなかったと。この頃から美術品を巡って米ソ対立があったと考えると興味深いです。ソ連がこんな感じだから、米国も持ち逃げするのではないかと懸念するフランス人の不信感も理解できます。

このMonuments Menとは、正式にはThe Monuments, Fine Arts, and Archives program (MFAA)に協力した人々であり、連合軍の進攻と共に、文化財や美術品の状態を確認し、その場で簡易的に修復したり、それ以上の破損を防ぐ処置をしていったそうです。「美術探偵」としての役割も戦後まで続きましたが、映画では単に宝探しをしているだけなので、専門家の知識はそれほど必要ないように見えてしまいました。そもそもメンバーの選別はトントン拍子で何に長けているのか分かりづらく、各自がどう専門知識を発揮したのかはほとんど描かれていません。

戦地だけれどゆる〜い感じ。それでいてやたらと湿っぽくなるシーンが挟まれます。最低3:1くらいの割合で、緊張の連続の後にしんみりするのは効果的だと思うのですが、肝心の緊張感がありません。
またBill Murrayは、居るだけで何となく面白いので流石ですけど(^^)、それほどふざけている訳でもなく、ユーモア要素もゆるゆるでした。

分担して捜索しているので場所がころころと変わり、状況の把握には注視していないといけません。こういう内容で行間が広いのはあまりよろしくない気がします。

生きるか死ぬかの事態なのに、美術品を死守すべきか…。芸術を心底愛している人達でないとそこまでは出来ないかも知れません。

戦争は何も生きている人間だけを殺すのではない…。先人の想いが詰まった作品、創り上げてきた文化を壊すことで、人類の軌跡も消滅させてしまうのだという視点も、平和を維持する上で大切なのでしょう。

最後に出てくるお爺さんはGeorge Clooneyの実父です。

類似のテーマでは、個人による返還を求めた “Woman in Gold” の方が感動的だと思いました。

ちなみにMFAAは戦後日本でも活動していたそうです。

“..... if you destroy their history, you destroy their achievements and it's as if they never existed. “
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