荒野の狼

ミケランジェロ・プロジェクトの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.5
久々に、お父さんと息子(小学生以上)が一緒に観ても良いだろうという意味で上質な作品に出会った。とはいえ気晴らしで映画を見る人には向いていない。戦争というのは、大量虐殺もあるけれど、こう言う側面もあるんだよって事をスマートに描いている。ブラッドベリーの『華氏451度』よりも、こちらの優しい表現の方がより多くの人に伝わると思う。戦争も含め、人間の営為の中で何が大切なのか、と言う事を表す術(すべ)として、よく出来た映画ほど貴重なものはない。ここまで来るともう「事実をもとにした物語」なんて言う前置など要らない。かえって作品の価値を落とす。ピカソの絵が真贋かどうかはコレクターか投機筋に任せておけばいい。美や芸術はそんなものを超えたところにある、一旦魅せられれば、それがコピーやフェイクだって真実だ。本質を見誤らなぬようにクルーニーチックなユーモアでかなり周到に作られていて、映画でできる事の範囲を踏み外していない所は、やっぱり「知性の差」なんだなあと思わせる。全ての俳優が抜かりなく素晴らしい。「大人たち」は、こういうものを作る為にいる。
荒野の狼

荒野の狼