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ヴァリデーション(原題)のninjiroのレビュー・感想・評価

ヴァリデーション(原題)(2007年製作の映画)
4.2
人を笑顔にする≒できるということ


人を笑顔にすることとは、容易いことではないにしても、例えば明日から心掛けて、そうしようと決めて、絶対に出来ないことではないはず。

その瞬間瞬間は、心からその人を思い、その人に為に良かれ、またその人に良く思って貰いたくて、その人を笑顔にしたい、と思う。

しかし、その瞬間、というものは瞬間的に起こり、瞬間的に終わりを迎えるものだ。

その次の瞬間には、直ぐに自分の事を顧みて、相手を笑顔にした自分は、相手から、他人から、どう思われただろうか?
口先だけで、何か思うところがあって、何かしらの取り入ろうとする動機があって、調子のいいことを言っていると思われたのではないか、などと、勝手に我にも彼にも益もない疑心暗鬼に囚われて、絵に描いたように自爆する。

そうして死んだはずのその瞬間を、また性懲りも無く忘れた頃に繰り返し、歓喜と絶望を行ったり来たりして、まさに川の流れの中の石ころのように翻弄され、我々は変質していく。

意味もない≒本質的な、褒め言葉を他人に発するという事は、変質した我々にとっては、勇気の要ること。

それを容易くやってのける人間が、ふと現れる。

変革である。

しかし、全ての革命が、革命が成った後に変質するのと同じく、新しい価値が理想を追い越していく。

笑顔にするということ自体が「目的」となった時点で、全ては行き詰まりを見せる。

さて、人を笑顔に「できる」ものとは、一体何か?

たった16分間の中に、人生の全てが詰まっている、なんてことは言わない。

しかし、少なくとも、幸せな涙を流せるという経験を久し振りにさせてもらった。

シュガーオレンジさん、テイアムさん、先輩レビュアー様各位、誠に有難うございました!
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