LudovicoMed

発情アニマル/発情アニマル アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ1978のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

4.0
《レイプされたので端から皆殺し》

アメリカの田舎のドライブインシアターで公開されたとかされないとかの幻のリベンジポルノムービーを観れたのですが、公序良俗の考え方を履き違えた全方位鬼畜な猥雑っぷりがスゴかった。
映画内で起こる事もだがそれ以上に、タランティーノはこういう猥雑な映画体験に憧れて『デスプルーフ』に至ったと、考えられるほどいわゆるアングラ映画館カルチャーの亜流作品です。
ところが、元は『悪魔のえじき』名義でソフト化されたこともあり、そっちではどうかは知らないが本作には最悪の難点がある。

それは盛り上がるシーンの全部がボカシのオンパレードという興醒めな珍事が起き、明らかに珍珍に注目さすような嫌らしい逆効果が発生してしまう。これではカミールキートンさんの人肌脱いだ逆襲のカタルシスがSMプレイのAVみたいで台無しになる、という無茶なお願いは置いといて、こんなにも痒い所に手が届く映画は貴重かと。とっても期待に忠実で不謹慎。

炎上を避けようと予防線張るような風潮を映画業界が段々と考えるようになり、アートハウス系においてもやりすぎ表現の行間に帳尻を合わせる社会問題が並列されがちな昨今、ヘイズコード規制を抜けた当時には、アウト連発の公序良俗がありました。
ただ本作は図らずも、エモーショナルに訴えかける猥雑なパワーに満ちて不思議とトラウマに至らない映画に仕上がってしまっているのです。

ニューヨークから避暑地にやってきたセクシーな美女に田舎の性に飢えた発情アニマルどもが襲いかかる流れはモロ『悪魔のいけにえ』の型であるノリ通り要はスプラッター映画でもある。
湖で一人全裸で泳ぐという不幸の因果応報をサービスカット的にスタートさせる。
総じてセクスプロイテーションのノリが通っているも、やっぱりリンチでレイプは苦しい。カタストロフィからカタルシスを爆発させる構図の強さのみを駆動させる以外は映画文法含め、今にも壊れそうだ。わざと動物の交尾みたくレイプを見せたり、家に帰ったヒロインから電話ガチャンのくだりが妙にビビる効果やら、後半の服を燃やし復讐心を燃焼させる表現にメラメラエフェクトをヒロインに映写させ真っ赤に染める子供騙し演出など野蛮な作劇と言える。

中には、ヘタレの極みみたいな童貞も嫌々参加しておりソイツの葛藤〜助け舟になるか、否かが物語を動かすサブプロットになっている。コイツの焦ったさがいわば禁欲への誘惑をもサスペンスするため、真の鬼畜はそこにあるような白眉場面が見られる。

ただ、復讐パートが割とこじんまりなのはこの手の映画にありがちでしょうが、拳銃の手に入り方は力技すぎる、。
またクライマックスの肝心な所がデタラメな編集になり、狙ってやったのか撮れ高がなかったかは分からないが、この態度のまま疲れたんで映画を終わらしますって潔さで最高にクールな幕引きを呼ぶ。

ここまで無秩序な映画だとテンションも上がるが、なにより本作が『アイスピットオンユアグレイヴ』とリメイクされ4本くらいのシリーズになっているカルト現象が面白すぎる。
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