CANACO

鑑定士と顔のない依頼人のCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』を手掛けたジュゼッペ・トルナトーレ監督・脚本作品。2013年公開。

某作品のレビューに、この作品と展開が似ていると書いてあったため、展開を理解したうえで鑑賞。事前情報なしで観たら驚いたかもしれない。
原作なしでこの脚本を書き上げられる才能には驚く。

美術鑑定士・オークショニアとして成功したヴァージルは、生身の女性が苦手で、誰とも付き合ったことがないまま歳を重ねた孤独な男性。趣味は、財産的価値が高い女性像を隠し部屋にコレクションすること。昔、才能がないと一蹴した画家くずれ・ビリーと組み、自身が開催するオークションで女性の絵画を格安で落としている。
そんな彼のもとに、クレアという女性から、両親が他界したので自宅にある家具や美術品を売りたいと依頼がくる。しかし不思議なのは、何度約束してもそのクレア本人が姿を現さないことだったーー。
ヴァージルは、信頼する機械職人・ロバートに、彼女の邸宅に落ちていた“気になる部品”について相談していたが、いつしか色男のロバートに恋のアドバイスも受けるようになる。そこから始まる、老いた鑑定士と美女の物語。

ヴァージルをどういう人物と捉えるかによって、展開を好意的に受け取れるかそうでないか分かれるかもしれない。個人的にはこの作品は好きではない。イヤミスと言い切ってよいと思う。イヤミスの中でも嫌いなほうに入る。イヤなことをする側に全く共感できない。

映像は綺麗なのは確か。でも、どんでん返しすれば、いいわけじゃないんだよなあ……。キーフレーズ「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」が生きてない物語で、ヴァージルの孤独が全く救われていないことに腹立つ。女性の絵画を集めていたことを“癖(へき)”で括られてしまうくらい心理描写が浅いのも残念。

ヴァージルは一流の鑑定士で仕事には困らない。ラストを追加すれば名作になると思う。
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