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鑑定士と顔のない依頼人の&yのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.5
【2014/1/22:新宿武蔵野館】良い評判を聞くなと思ったら、ニュー・シネマ・パラダイスの人なのか。
ミステリーありサスペンスありで具沢山。手袋はめたままの主人公とか小ネタも楽しいしテンポも良くて「娯楽映画観たな〜」って感じで面白かった…のだけど、なんかちょっと後味悪い。
これって結局は、主人公の鑑定士バージル爺さんが痛い目に遭っちゃう話で。彼は確かにその審美眼を悪用して絵の収集するし、画家を志した友人にイキな計らいができなかったりするけど、でもその審美眼を磨くために恋愛や友情を犠牲にして孤独と向き合ってきた。その結果として好きな絵画集めるくらいいいじゃないのご褒美だよ、と思ってしまった私にとっては、犠牲を払って愛するものをストイックに追求してきた童貞爺さんの孤独に漬け込んで騙す話に見えちゃって後味悪!と。イマイチスッキリしない。
とはいえ、そんなこと思うのは一部の外野だけで。騙したヤツらが与えた愛は贋作でも、爺さんが見出した愛は本物なのだろう。「価値がない」といってたクレアの母の肖像画をあの部屋に運んだことがそれを雄弁に物語っている。それは残酷だけど、本物を見出せないままの人生より幸せなのかもしれない(たとえ成就しなくても)。
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