「人間の感情も美術品と同じ、偽造できる」
面白かった。
絵画ミステリーと偏屈じじいの恋愛、二つのプロットが淀みなく合わさったみごとなシナリオが素晴らしかった。
鑑定士のヴァージルは、ある日女性から両親が死んだ家の骨董品を査定してほしいと電話を受ける。
ヴァージルは約束の日時に家に向かうが、彼女は現れない。
その間も、ヴァージルは相方と組んで高価な美術品をオークションを操作して落札させる。
女性から再び連絡があり、家に向かうと女性の姿は見えないが、使用人が現れて家に入れてもらう。
そこで査定を開始するが、気になる歯車があり持ち帰る。
それを知り合いの機械士に見てもらうと、とてつもなく高価な18世紀のオートマタ製作者だと分かる。
査定を行ううちに、依頼人の女性"クレア"はその家の隠し部屋で現在進行形で暮らしていることが判明。
この部分、驚愕しました。
彼女との取引を続けるうちに、じょじょにヴァージルはクレアに情が移っていきます。
ヴァージルの家の美術部屋には数多くの絵画が飾られていますが、すべて女性。
彼もまた女性への敬意が恐怖としてあらわれた一人の心の病を患っている人間なのでした。