半兵衛

街は自衛するの半兵衛のレビュー・感想・評価

街は自衛する(1951年製作の映画)
3.9
『キッスで殺せ』を彷彿とさせる夜道を走る車の視点ではじまるオープニング(実は後半のある場面につながっている)でテンションがあがり、その次のサッカー場での売上金を奪う場面での強奪から逃走まで無駄なくテンポの良い語り口と劇伴を使用しないことで緊張感を高める演出により一気に引き込まれていく。

ネオリアリズモの国らしく戦後の貧しい生活ゆえに犯罪に手を出した襲撃グループ境遇が描かれていくが、犯罪映画の進行の邪魔にならない程度に触れており、また逃走中の過程で犯人のバックボーンを描くことで慣れないことをしでかした素人犯罪者たちが追い詰められていく心理が切実に伝わってくる。

犯人とその関係者、警察、事件を報道するマスコミ、一般人と各々の動向を巧みに捌いて結末までスムーズに運んでいき、フェリーニの脚本も最高。ラストは多少甘いが、苦しい社会の中に対する微かな希望にも見える。

精神的に追い込まれた犯人の一人が自殺するシーンで、それまで犯人を捉えていたカメラが銃声とともに犯人の目線になり、宙をあおいで地面に叩きつけられるのがエモい。あと犯人グループの一人である先生の、裏社会に関わってしまったゆえの悲惨な死に様が切ない。

元サッカー選手が事件の首謀者というのはナイスアイデアだと思う。
半兵衛

半兵衛