YasujiOshiba

街は自衛するのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

街は自衛する(1951年製作の映画)
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日本版DVD(コスミック出版)。23-77。ロッロブリージダがお目当てだけれど、元サッカー選手のパオロの恋人ダニエーラの役で、出演シーンは前半に少しだけ。存在感はある。ハッとさせるほどの美人の愛人でなければあの役には説得力がない。けれど、泥だらけでお金を持ち帰ってきた元恋人に風呂を勧めると、すきをみて警察を呼ぶ女でもある。裏切り者とかいうのではない。犯罪者とはかかわりになりたくないのだ。

そんな存在によって「街は守られている La città si difende 」。それが映画のタイトルでもある。再帰動詞 difendersi は「自衛する」ということでよいのだけれど、受け身の si と考えることもできる。誰か英雄が街を守っているわけではなく、ダニエーラのような行動や、警察の動き、人々の行動が、街を守っている。イタリア語の動詞は「si」を用いることで、主語を特定せずに行為を表すことができる。映画が狙ったのも、そのあたりの面白さというわけなのだろう。

原案のコメンチーニ、フェリーニ、ピネッリ、ジェルミらが、そんなふうに練り上げたのは、アメリカのギャング映画をイタリア風に味付けした物語。だから冒頭の強盗シーンも、イタリアらしく銀行ではなく日曜日のサッカースタジアム。さらに強盗に入る主人公は、そろいもそろって社会の落ちこぼれ。特にスターがいるわけでもなく、少々感情移入がしにくい。でもきっと、それが狙いなのだろう。

パオロは怪我で選手生命を断たれた元プロサッカー選手。子どもたちからは声をかけられるのだけど、この落ちた英雄は、そんな声をうるさがって追い払うだけ。その表情は陰になってよく見えないのだけど、そんなハードボイルドなタッチはジェルミの好みなんだよね。

ルイージは家族を抱えながらの失業者。愛情にあふれ妻にも愛されているのだけど、どうしてまたこんなに粗暴なのだろうという男でもある。これもジェルミ好みの不器用な男。そしてグイード。画家で先生(professore)と呼ばれているのだが、その腕前にも関わらず、生活に困り、流しの似顔絵描きにみをやつしてついに犯罪に手を染めてしまう。いちばんハードボイルド。街のヤクザ者の手にかかるシーンなんて、じつにノワール。

ひとり命が助かるのはいちばん若いアルベルト。学生で両親のもとで暮らしているのだが、生活の苦しさから犯罪に走ったことがうかがえる。ほかの仲間はそれぞれに逮捕されたり命を落としてゆくが、いちばん若い彼だけが生き残る。

このアルベルトで話を締めるあたりは、もしかしたらフェリーニ&ピネッリの『青春群像』(1953)へと繋がったのかもしれない。いちばん若いインテルレンギだけがローマへ出発するあのラストは、もしかすると、この映画から発展したのではないだろうか。

いずれにせよ、この若者は命が助かり、貧乏な両親も子宝だけは失わずに済むというラスト。ジェルミ好みだね。
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