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始まりも終わりもないのpetricallのレビュー・感想・評価

始まりも終わりもない(2013年製作の映画)
3.9
自然は人間存在にとっての大きな脅威となり得る。だから人は身体という自然に秩序を与え、非自然的なものにしようとする。道徳や社会という名の下で、ある一定の行動様式が強制され、自然としての人間存在は非自然の人間存在へと矯正される。(それでも尚人は自然存在ではあるのだが…)

この作品は、無意識のうちに秩序づけられた身体ではなく、無秩序状態(自然状態)の身体の動きを映し取ろうとしたパンク映画中のパンク映画ではないだろうか。(映像といったほうが適切か…)
秩序づけられた人間(私達)がこの作品を目の当たりにした時の衝撃や気味の悪さは計り知れないだろう。
しかし、本当に不自然なのはどちらだろうか。社会という得体の知れないものによって、数え切れない程のルールや常識の網目に絡め取られていなければ、私達は田中泯のように、身体をもっと自然に自由に動かすのではないだろうか。皆が同じように前を向いて、同じ位のスピードで、同じような姿勢で、同じようなモードの服を着てスタスタと歩く。道で寝そべることも物理的に可能なのに、決して道では寝ず、ベッドで寝る。お利口に秩序に則る非本能的な身体を逆照射的に浮かびあがらせる。
この作品は哲学的なテーマに真っ向から向き合った身体芸術だと思う。
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