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劇場版 空の境界/未来福音のarchのレビュー・感想・評価

5.0
繰り返し何度も家で観ていたが、この度劇場で鑑賞したので記録。

シリーズを補完する完璧な後日談であり、尚且つ空の境界らしい余白を埋める物語である。それを可能にするエピソード数(瀬尾と黒糖、爆弾魔、2010年のみつるとまな、1996年の識など)を巧妙な未来と過去、ふたつの未来視などの軸で図式化して脚本を構成していて受け取りやすい。
シリーズの中でも映画としては1番好きかもしれない。

2種類の未来視を持つ初登場のキャラクター(台詞では未来視の爆弾魔は登場しているが)を中心に、時系列と場所を行き来しながら紡がれていく。爆弾魔の話は原作でも当初から仄めかされていたので、ファン冥利に尽きる訳だが、その話と瀬尾の未来視の話を対比することで本作のテーマである「未来への福音」が立ち上がる感じが本当に素晴らしい。

本作自体が殺人考察(後編)の後の物語と痛覚残留後の話をやっているので、作品上での時系列として「過去」と「未来」を描いている。「過去」では我々が知っている結末や事実へ向けたは「確定した未来」となり、「未来」は殺人考察(後編)や本作の先でこのキャラクター達が生きていく「あやふやな未来」として観客は受け取る。
その中での「未来への福音」なのである。識のエピソードや黒糖の未来を見た瀬尾との別れ際の会話が、「確定した未来」があったとして、それに対する「知る」ことの福音、「知らないでいる」こと福音になっている。そして「あやふや未来」として2010年のエピソードや爆弾魔との決着、黒糖と瀬尾のシーンがあり、「あやふや」だからこそ未来は良いんだという不安への解答になっている。

我々にとっての福音としての本作、そして私が愛したキャラクター達の未来への福音。最高のファンムービーになっていると思う。

本当に続編がみたい。
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