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チャイニーズ・オデッセイ Part2 永遠の恋のHALのレビュー・感想・評価

4.7
まさかラストの20分でこんなに驚天動地の展開を描いて胸に突き刺さる結末が待っているとは。ハッピーエンドともビターエンドともとれるまさしく「永遠の恋」をめぐる物語だったが、それに加えて「孫悟空」というヒーローのオリジンとすら思えた。前世の因縁があって孫悟空として覚醒する男の物語かと思いきや、500年前にタイムスリップしたことで、「人間をやめて孫悟空として失ってしまった恋人を救いに行く」という選択を選ぶ男の話になるダイナミズム。目の前で猪八戒ら(正確に言えば彼らもまた猪八戒に転生する前の人間)を殺され、自身も心臓を差し出すかのように斬られた後の場面で、半透明に光るチャウシンチーと猪八戒たちが「俺のせいですまんなぁ……」と話している光景は脱力そのものなのだが、その空気のまま「俺はこの苦痛を抱えて孫悟空として生きる、お前たちはさっさと転生しろ!」と言い放つ様に突然目頭が熱くなる。

あれだけ恋心に揺れていた男が、恋を捨てて人間を捨てて妖怪としてピンチに駆けつけ、暴れまわる。これがヒーローでなくてなんであろうか。前世の恋人はその正体に気づくが、孫悟空は人間の感情に揺れると頭に付けた「緊箍児」が締まるというのもわかりやすい。そもそもこれをつけることが人間をやめて生きる事であるという描写が非常に丁寧。この二部作目自体も人格がくるくるシャッフルされてしまうというコメディや時系列の攪乱が多用されるので、その展開がすべて収束していくのもちょっとびっくりするような気持になる。そしてラストの展開がほんとに粋で、コメディだと思って見ていたらラストショットで胸が引き裂かれるような気持になるあたり『不思議惑星キン・ザ・ザ』あたりに近いかも。永遠に会えなくなることは、自分一人の奇跡を待ち続ける事であるのかもしれない。
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